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これまで基本的かつ汎用的なフレームワークを紹介してきたが、マーケティングや経営企画の分野では、特定のフレームワークを活用するケースが多い。有名なものでは、3C(顧客、自社、競合)、4P(製品、価格、流通、プロモーション)、SWOT分析(自社の強みと弱み、外部環境の機会と脅威)などが挙げられる。いずれもあらかじめ用意された箱に沿って要素を挙げていくことで現状分析や戦略立案が容易になる。こうしたフレームワークは特定の業務にしか活用できず、自分の仕事や生活には無縁だと思い込んでいる人も多いだろう。

マーケティングでよく使われるフレームワークに、AIDMAモデルがある。これは消費者が商品を知って購入にいたるまでのプロセスを「Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)」というモデルで把握し、ボトルネックを探るときに活用する。ここで考えたいのは、本来マーケティングは消費者の「心をつかむ」ための活動であるということだ。ならば、対人関係など人の心が絡む場面で十分に応用がきくはずだ。

別の言い方をすれば、AIDMAモデルはそのまま人間関係にも使えるといえる。パーティーに参加しても誰とも知り合いになれないのは、見た目が地味で、第一段階の「注意」を引きつけられないことに原因があるのかもしれない。あるいは注意を引くことができても、会話が退屈で次の「関心」を持ってもらうところで足踏みしているのかもしれない。このようにAIDMAで人間関係や人脈づくりを見直せば、自分がどこで躓いているのかが一目瞭然になる。

これは一例にすぎない。三角関係に悩む人なら3Cで相手と自分、競争相手の置かれた複雑な状況を整理することができるし、転職を考えているなら、SWOT分析を使って面接でアピールすべき点を明確にすることも可能だ。たとえ現在の仕事で使うのでなくても、定型化されたフレームワークのいくつかを知っておいて損はない。

既存のものをうまく活用できない場合は、先に紹介した2軸マップやロジックツリーを使うことになる。これらのフレームワークの理論はシンプルだ。ただし、うまく使いこなすためには少々コツがいる。軸や箱の設定によって分析の精度が大きく変わってしまうからだ。

2軸マップの軸は、MECEになっていることが大前提である。もし2軸マップの軸がMECEでなければ、箱を網羅的につくることができない。

どうすれば漏れなく、ダブりのない軸を設定できるのか。トレーニングの一環としてお勧めしたいのがフェルミ推定だ。

「昼休みに1時間、蛍光灯を消すことの節電効果は?」

このようにつかみどころがない数量について、論理的に推定して概算することをフェルミ推定という。この問題を解くには、まず自社にある蛍光灯の数を求める必要がある。このとき、あたりを見回して蛍光灯を数えるのは、どう考えても非現実的だ。蛍光灯の数を把握するには、ビル全体を俯瞰して「オフィス/廊下/トイレ」と切り分け、それぞれの部屋について蛍光灯の数を計算していくほうが、明らかに合理的で漏れも生じづらい。

これはまさにフレームワークで軸やクライテリアを設定するときと同じ発想といっていい。フェルミ推定で全体を分解して要素を洗い出すプロセスは、そのまま軸を設定するトレーニングになるのだ。

逆にいうと、フレームワークを使いこなせる人なら、フェルミ推定も恐れるに足らずである。これからの時代はコスト削減の会議で「昼休み消灯の削減効果」が議題にのぼるシーンも十分に考えられるが、推定例のように短時間で精度の高い概算を出せば、周りを驚かせることができるに違いない。