2011年に始まったNHKスペシャルの大型シリーズ番組『未解決事件』。第二弾の「オウム真理教」を放送した直後に、逃亡中だった菊地容疑者や高橋容疑者が立て続けに逮捕されたのは記憶に新しいところです。

 未解決事件が社会に及ぼす影響について、作家・高村薫氏の考えが書籍『未解決事件』のなかで紹介されています。

 「一人の人間にとって、ある時代の一つ一つの事件というのは、自分の人生の一部になっていくんです。人生のなかで『ああ、あの時はあんな事件があった。こんな事件があった』と。それが未解決に終わるということは、『あそこにも訳の分からない事件があった。ここにも犯人が分からない事件があった』つまり、人生の中に一つの『穴』があいていることになる。だから出来うる限り未解決事件を作ってはいけないのです......」

 NHK番組『未解決事件』も同じような思いがこめられており、「未解決事件」を時代の"大いなる失敗"ととらえ、それを徹底的に検証することが、これからのために大切だと考え、制作されています。

 その第一弾として放送されたのが、「グリコ・森永事件」。3部構成、3時間超えというボリュームのみならず、300人以上の捜査関係者や担当記者の証言を基に、事件の裏側を描いた「実録ドラマ」、はじめて浮かび上がったスクープからなる「ドキュメンタリー」、さらに、当時の事件記者たちが事件を語る「トークドキュメント」という分厚い内容で構成されました。ここには、警察の目線、メディアの目線、と複眼的な視点で事件をとらえるといった狙いがあったと、同書のなかで明かされています。

 なぜ、あまたある未解決事件のなかから、第一回目に「グリコ・森永事件」が選ばれたのかについても、触れられています。第一回目の放送にあたって、NHK社会部のデスク陣が集まって会議をしたところ、「先輩記者たちが苦渋を舐めてきた姿を見ているから」「劇場型犯罪が実質的にあの事件から始まったから」といった意見から、同事件を検証したいといった声が挙がったのです。当時、事件を担当していた記者は、時効まで常に持ち歩いていたという犯人逮捕の予定原稿を、いまも捨てきれずにいるといいます。

 未解決事件として、多くの人に謎と不安をあたえ続けている「グリコ・森永事件」。同書を開くことが、事件解決につながる一歩になるのかもしれません。



『未解決事件 グリコ・森永事件〜捜査員300人の証言』
 著者:NHKスペシャル取材班
 出版社:文藝春秋
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