最低限押さえておきたいIT用語を、コミカルなストーリー仕立てで解説する。


※主な登場人物
藤井君/おっちょこちょいで新しもの好きの若者。山田部長の部下。
山田部長/凸凹食品株式会社のおとぼけ営業部長。IT系はものすごく苦手。
木村君/凸凹食品のシステム担当者。


藤井君は、商談のため山田部長と大阪出張だ。金曜は資料が準備できていなくて慌てふためいていた藤井君だが、週末にクラウドサービスを活用したので準備万端。が、新幹線の中で藤井君が青ざめている。肝心の資料をプリントアウトしたまま、自宅に忘れてきたのだ。それを知った部長はカンカンだ。

「プレゼン資料を忘れただと?すぐに取ってこい」

「そんなあ。あ、そうだ。ファイルはネットワーク上に保存されてるんです。大阪支社に寄って、ダウンロードしてプリントすればいいんですよ。ね、部長、クラウドって便利でしょう。ああ、よかった」大阪支社で藤井君は、クラウドサービスにアクセスしようとしたが、やがて何やら不穏な空気が流れ始めた。

「あれ、おかしいな。パスワードが違うのかな」

「おいモヤモヤ雲はどうなった。どこでも書類を取り出せるんだろう? まさか今日は快晴だから、雲が出てないなんてことはないだろうな」

「いえ、だから本当の雲じゃないですから! ちょっと会社に電話してみます。あ、真央ちゃん、藤井ですが、僕のデスクのパソコンにピンクの付箋が貼ってあるんだけど。そうそう、そこにクラウドのパスワードって書いてあるでしょう? それ、読み上げてくれる?」

絵に描いたような杜撰なセキュリティである。セキュリティは画面の中だけではない。技術を利用する人間も含めたセキュリティ対策が必要だ。正しいパスワードがわかったのに、藤井君はまだ悪戦苦闘している。

「パスワードは合ってるんですが、接続できないんですよ」

「じゃあ、その雲業者に問い合わせろ」

「それが、接続できないと連絡先もわからないんですよ。接続できないときこそ、連絡したいのに。そもそも、どこの業者がやってるかなんて、そこまで意識して使ってないですよ。クラウドだけに雲をつかむような話だね、こりゃ」

「オチをつけてどうするんだよ。早く何とかしろ」そうこうしているうちに30分が経過。

「あっ、つながりました。なんか、調子悪かったみたいですね」。クラウドサービスは、信頼できる業者なら自前の設備よりはるかに安心できるが、それでも、ファイル保管などの責任を他人に一任することに変わりない。接続できない場合も自己責任である。それだけに、何を任せて何を任せないのかの見極めが大切だ。

「あった、あった、これですよ。あとですぐに取り出せるようにファイル名を『山田商会宛の見積書(機密)』にしておいたんですよ」と藤井君。すると、2人の様子を心配そうに見ていた大阪支社のITに詳しい社員が「あれ、そのファイル、一般公開設定になってますよ。世界中の誰でも読める状態です!」。

「おい、雲から世界中にうちの機密を配布したのか。ほかの取引先や競合に漏れたらどうするんだっ」

「まさかそんな設定になってたなんて……」

「とにかく早くプリントして出発するぞ」2人は急ぎ足で取引先へ向かった。

※すべて雑誌掲載当時