この結果により、学習療法は文化や言語の違いを越えて効果があることが証明された。

実際に、トライアルを実施したEJでは、2012年5月より、学習療法を計4施設に正式に導入することを決定したという。

川島教授によれば、自分がどこにいるかわからない、誕生日を忘れてしまうといった認知症の中心症状は、脳の背内側前頭前野機能の低下が原因とのこと。

また、判断力低下や記憶障害は背外側前頭前野の機能低下が原因だそうだ。

前頭前野の機能は20歳から直線的に下がり、年を重ねるほど機能が低下してしまう。

これを改善するには、作動記憶力のアップが必要だと川島教授。

作動記憶とは、思考や行動に必要な情報を記憶として一時的に頭の中に書きとどめておくことをいう。

文章を読み、その内容を一時的に記憶することも作動記憶のひとつだ。

作動記憶は、一けたの簡単な計算問題を解くことや、本の音読によってトレーニングすることができる。

そのため、これを活用した学習療法は、効果的だといえる。

最後に、川島教授は「長寿国である日本は、高齢者に対して何をしているのか、世界中から注目されている。

超高齢化社会については、先進国だけではなく、どの国も危機感を持っている」と話した。

そのため、次のステップとしては、学習療法の費用対効果を調べたいという。

これについては、フィンランドでの大規模調査を検討しているとのこと。

「学習療法は紙と鉛筆があればどこでもできる。

この費用対効果についてもっと調べていきたい。

この方法は世界中を救えると確信している」と語り、セミナーを締めくくった。