もし、自分の家族とは血のつながりのない人が、自分の家に住み始めたら、あなたはどう対応しますか。家族の一員として迎え入れるか、それとも、ある一定の距離感を保ったまま接するのか。どんなに仲良くなっても、他人には違いないので、自分をさらけ出すには時間がかかりそうです。

 中学3年生の藍子の目の前に現れたのは、レミちゃんという女性。藍子が小さな頃から、レミちゃんは時々家に遊びに来ては、その日に帰ったり何日か泊まっていったりしていました。しかし、ある年は少し様子が違いました。歯ブラシも洗濯物もレミちゃんの私物はどんどん増えていく一方。もはや遊びに来ているのか住んでいるのか判別ができないようになったのです。

 そんなレミちゃんについて両親は見て見ぬふりをしているよう。そもそもレミちゃんは両親の学生時代の友人です。昔は小説の新人賞の最終候補に残るなど、文才があったそうですが、今では面影なし。いつもしかめっ面で煙草ばかり吸っています。

 ある日、両親から「レミには心にちょっと病気がある」と教えられた藍子。両親は受験勉強の合間に、レミのそばにいてあげてほしいと藍子にお願いするのです。大きくなった不良少女を見ているようで、いい意味でも悪い意味でもちょっと危険な感じのするレミちゃんを藍子は嫌いになれずにいました。むしろ、作家を志望していることもあり、レミちゃんに興味があったのです。両親のお願いを快諾すると、藍子とレミちゃんの不思議な関係がはじまりました。

 大人になりきれない37歳と子供ではいられない15歳は、自分を埋め合わせるように仲良くなっていきます。

 書籍『すみれ』は、23歳の時に『ひとり日和』で芥川龍之介賞を受賞し、26歳の時には、『かけら』で川端康成文学賞を受賞した青山七恵氏の最新作です。著者がはじめて「心で書いた小説」と紹介する会心の青春物語です。



『すみれ』
 著者:青山 七恵
 出版社:文藝春秋
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