会社にとって一番大事なものは何かを問うマンガ

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 「若い人が本を読まなくなった」と言われて久しくなった。それが本当かどうかはともかく、出版業界の不況は現在も続いており、その現状を打破すべく出版社は様々な工夫をこらして本作りをしている。

 ビジネス書の中でも、専門用語が並ぶような重めの作りのものから、新入社員や就職活動中の学生でもビジネスのイロハが分かるライトなものまで様々な本が出ている。さらに、ビジネス書業界に一大旋風を巻き起こした『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海/著、ダイヤモンド社/刊)以後、イラストを使ったり、物語形式で進む書籍も多く見受けられるようになった。

 『マンガで入門!会社の数字が面白いほどわかる本』(森岡寛/作、渡邊治四/画、ダイヤモンド社/刊)は、新卒採用で真心絆食品に入社した向井聡が、財務コンサルタントの宮崎要とともに、様々な社員たちを巻き込んで会社の危機に立ち向かっていく様子を描いた“ビジネスマンガ”だ。

 「このままいくと、銀行に最後通告をつきつけられます。最低でも、向こう1年間で1億円キャッシュフローの改善が必要となりますね」
たまたま、宮崎と社長の真田の会話を聞いてしまった、入社前の向井。それでも真心絆食品でやってみる決意をし、なんと財務改善プロジェクトのリーダーに抜擢される。最初は向井に競争心をむき出しにしていた“あこがれのマドンナ”伊藤奈々子の協力を得て、苦難を乗り越えていく。

 向井は会社数字のしくみについて無知であるため、その成長の過程で財務の基本を学び、経理部、製造部、営業部の各現場の仕事を経験しながら、会社の問題点をつかみ、対応策を考えていく。その中で、読者は会社のしくみについて勉強することができるのだ。また、「理念」とは何か、組織の中で「働く」とは何かといった視点についても、学ぶことができるようになっている。

 会社が良くなるための指標には数字が必要なのは確かだ。しかし、一つの側面のみから見ると偏った考えになり、組織の中での「正義」と「悪」を作りだしてしまいがちになる。本書では各部署が抱える想いを、キャラクターを通して理解できるので、「正義」と「悪」の二項対立ではなく、組織全体の理解に繋がる。

 本作の絵を担当する渡邊治四さんは「読んでくれた人が自分に投影して、考えるきっかけになったり、行動に繋がってくれると嬉しい」と語る。

 ビジネスの現場にドラマがないかというと、そうではなくて、常にドラマが繰り広げられている。経営層から平社員まで、誰もが仕事をしている中で、泣くことも笑うことも苦しくなることも経験しているだろう。
 マンガ形式のため、活字が苦手な人でも十分読むことができる本書は、会社経営のしくみを理解しながら、人間ドラマも楽しむことができる。これから社会に踏み出そうとしている人や踏み出して間もない頃の人にとっては、「知識」と「希望」を与えてくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)