禁止看板の風俗(その1:立小便の心理)

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 立小便とは、「便所以外の場所で立ったまま小便をすること」です。もちろん、立小便は、やってはいけないこと(軽犯罪法違反)なのですが、町から立小便を無くすためには、本人のモラルに負うところが多いため、町には、「立小便禁止看板(または貼り紙)」が設置されています。立小便禁止看板がある場所は、同時に、立小便がされやすい場所を意味しています。
 立小便は、飲酒の後の帰り道など、緊張から解放され、ほっとした気持ちで道を歩いているときにしたくなります。たとえば、自然に明るい道路から4mぐらい路地に入った薄暗い場所などがそのための快適な空間です(東芝レビュー,1962「立小便と明るさ」)。つまり、?目立たない場所であること、?薄暗い場所であること、の二つの条件が揃っていることです。
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 第一の条件である「目立たない場所」とは、駐車場の隅の塀で囲まれた空間や、ほとんど人が通らない路地やビルとビルの隙間などがこれに該当します。また、立小便をする人の心理として、液体が一か所にいつまでも溜まっていては、何となく後ろめたいので、二度前後の傾斜の坂道が好まれる場合があります。実際、石川県の金沢には、漏尿(ろうばり)坂という名の坂道が存在し、近くには歓楽街があります(国本昭二、サカロジー)。
 第二の「薄暗い場所」についてですが、明るい場所は、人目につきやすいので、これは必須の条件と言えます。しかし、あまり真っ暗な場所は、立小便の場所としては好まれません。用を足している最中は無防備な体制なので、真っ暗だと本能的に不安になるためです。
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 次に、具体的な立小便看板の事例を見ていくことにします。立小便禁止看板には、「立小便はやめましょう」というような優しい口調のものから、「立小便するな!逮捕する」といった強烈なものまでさまざまです。中には、「粗末な一物をさらけ出す...」というような文学表現の工夫により恐れ慄かせ退散させる看板もあります。
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 立小便お断りの看板や貼り紙の代わりに、神社の鳥居の絵を書く場合があります。路上の壁などに「立小便お断り」の看板を何個も並べるととんでもない風景になってしまいますが、鳥居の絵であれば和らぎます。これは、「人間が書いた看板なら無視する人もいるが、神様には逆らえないだろう。」という心理を応用したものです。京都市営地下鉄の駅ホームでは、酔っ払い客らに立小便をさせないために壁に貼られた赤い鳥居の絵が威力を発揮しています。鳥丸線4駅のホームでは、さまざまな貼り紙が試された結果、鳥居の絵が一番効果があることが解り、約20年間以上神通力を発揮しています(京都新聞(2008.8.25夕刊)。