花火師に聞く! 花火事情




昨年は3.11の影響で、花見は自粛、隅田川の花火大会も1カ月遅れで実施されるなど各種イベントは沈滞ムードでした。しかし、今年は復興支援、復興祈願ということで各地で大きなイベントが用意されています。夜空に大輪の花を咲かせる花火大会はこれからまさにシーズンですが、最近の花火事情はどんな風になっているのでしょう。株式会社ホソヤエンタープライズ、代表取締役社長の細谷圭二さんにお話を伺いました。





取材に伺った細谷社長の会社はスゴイ会社です。細谷社長でなんと4代目! 150年以上も花火に携わっているのです。江戸の花火というと、「玉屋ーっ!」、「鍵屋ーっ!」の掛け声でおなじみ、玉屋と鍵屋が有名ですが、細谷さんの所はその鍵屋さんに「玉」を納品していたという家。なんと、パリ万博にも花火を出展。その当時のはんてんが大切に保管されています(!)。はんてんの胴周りにはfireworkの白文字が入っています。歴史の重みですね。











■花火大会は4.5日に1回ある!



――これからシーズンになると思うんですが、全国で花火大会ってどのくらいの数開催されているものですか?



細谷社長 バブルの時で、当社が担当した大会は全国で100カ所ぐらいだったね。昨年は震災の影響ですごく減って、業界は大変だったよ。今は、70〜80カ所ぐらいかなあ。



――80カ所として4.5日の1回の割合ですね。スゴイ頻度で花火大会があるんですね。



細谷社長 4.5日に1回で、1年ならして開催してくれたら助かるんだけどね(笑)。実際は夏に集中するからもう大変です。全国を飛び回ってね。うちは最大500人ぐらいを動員してやってます。



――花火師さんに繁忙期ってあるんでしょうか?



細谷社長 ゴールデンウイークを皮切りに梅雨まででまずひと区切り。梅雨の間は無理だから。梅雨が明けてから本格的に忙しくなってお盆前でまたひと区切り。その後秋祭りやらの地方での祭礼があって忙しくなります。10月には運動会やなんか、音だけの花火なんてのもあってね。冬は冬で、空気が澄んでいて花火がきれいに見えるから冬の花火イベントもあります。



――夏が最盛期だとしても、春を除けば結構どこかで花火を打ち上げているんですね。



細谷社長 日本で一番早い花火大会ってことで4月にやる沖縄もあるけどね(笑)。日本人は花火が好きなんですよ。



■江戸の花火のルーツ



――細谷社長の地元、江戸ということで、やはり一番有名なのは「隅田川の花火大会」だと思うんですが……。



細谷社長 隅田川の花火はね、もともと「川開き」ってことで、八代将軍徳川吉宗の時代に始まったのがそもそもなんですよ(享保17年の大飢饉の鎮魂のため)。



――調べたら1733年なので、なんと270年以上も昔の話なんですね。



細谷社長 いっとき、昭和40年代に途切れたことがあったんだよ。僕が子供の時にね。当時、公害が問題になっててね。川が臭くて、見物で行くようなところじゃないってことでね。



――そうなんですか。



細谷社長 それが昭和53年(1978年)に今の「隅田川花火大会」として復活したんです。なのでこの名前になってからの歴史は浅いとも言えます。



――東京の花火に何か特徴はありますか?



細谷社長 東京は住宅が密集しているからあんまり大きな「玉」は打ち上げられないんですよ(笑)。一尺五寸玉までなんです。地方へ行くと、二尺玉、三尺玉を使ったりできるんだけど。



――三尺玉っていうとどのくらいの大きさになるんでしょうか?



細谷社長 三尺は90.9cm。重量でいうと270kgあるからね。イメージでいうとお相撲さんの小錦。あの重さがドーンと上がる感じ(笑)。600mぐらい上空まで上がって、やっぱり600mぐらいの大輪の花が夜空に咲くんだよ。



――それは壮観ですね。



細谷社長 さっきの話に戻りますが、大体、花火大会なんて言葉があるのは日本だけなんですよ。海外では何かの記念日に花火を上げることはあるけど、ただ純粋に花火を見るためだけのイベントを開催するのは日本だけ。いかに日本人の心に根付いているかという証拠だと思います。



■打ち上げ花火って1発いくらですか?



――下世話な話で恐縮なんですが花火大会で使われる花火って1発いくらぐらいするんでしょうか?



細谷社長 それは答えるのが難しい質問ですね。花火の種類によっても違うし、大会によっても違うから。あと、人件費から何から全部込みで価格を出すので1発いくらっていうのには答えにくいです。



――なるほど。では、出せる価格でいいので、参考価格がありましたら教えていただけないでしょうか。



細谷社長 そうだねえ。例えば運動会で昼間に使う3号玉、音だけドーンと鳴るやつ、あれが3,000円から要相談ですか。



――なるほど。意外に安いものなんですね。



細谷社長 あくまで参考価格だからね(笑)。



――昔、ダウンタウンの『ガキの使いやあらへんで!』という番組で、松本人志さんが100万円下ろして花火大会をやるという企画がありました。で、結局上がったのは1発だけだったみたいですが。



細谷社長 それやったのウチだよ(笑)。



――そうなんですか?



細谷社長 テレビに映ったのは1発だったかもしれないけど、実際は(何かあった時のために)予備のためにもう1発作ったし、(カメラのリハ用に)小さい玉を1発上げたりしてる(笑)。人も出してるしね。



■花火師になりたい人はどうすればいい?



――若い人が「花火師になりたい」としたらどうすればなれるんでしょうか。



細谷社長 うーん。うちでも新卒の人を雇用したりしたんだけどなかなか定着しないんだよね。「花火が作れたら給料も要らない」なんて言ってても辞めちゃったりね。やっぱり3年ぐらいは辛抱して修行しないといけないんだけど。



――若い人が入ってこないと後継者不足になったりしないんでしょうか。



細谷社長 それがね、花火師の業界って全然後継者不足とは無縁なんですよ。



――えっ、そうなんですか?



細谷社長 好きな人がやってくるんですよ。逆に好きじゃないと続かないんだけどね。僕なんか修行中には「火の粉で顔を洗うぐらいじゃなきゃ一人前じゃねえ」って言われたぐらいでね。昔の話だよ(笑)。今はもう点火するのも筒からケーブルを引っ張って離れたところからやってるし。ただ、火の粉をかぶってもやるぐらいの心意気。これがないと続かないね。どうしてもなりたいんだったら、まず会社に空き枠があるかどうか調べる。そこからだなあ。



「今年は復興祈願のために福島できれいな花火を見せますよ」と語ってくれた、いなせな細谷社長のお話はとても面白かったのでした。そもそも享保年間に始まった江戸の「川開き花火」ももともとは鎮魂のためのもの。みなさんも今年は花火大会に出掛けてみませんか?







(高橋モータース@dcp)



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