一方、実際に自分や家族が統合失調症と診断された場合、「すぐに治療したい」「治療をすすめる」という回答は、前回の調査に比べて上昇。

高橋名誉総長は、この結果を「意外」と受け止めた上で、「本当に実態を表しているか疑問」と懐疑の念を示した。

その根拠としては、統合失調症に対する認知レベルが高い人ほど「統合失調症への差別があることを認識している」と回答していること、統合失調症の患者は「恥ずかしい」「差別を受けるかもしれない」という意識から、自身や家族が患者であることを隠す人が元来多いことが挙がった。

凶悪事件を報じるニュースで「犯人は精神科の通院歴があり」といった一言が足されることで、ネガティブなイメージが広まりやすいが、高橋名誉総長は「当事者の体験談を聞くことが最も重要」と主張する。

今回のセミナーでは、実際に看護学生の精神障害者に対する考え方が、精神科での実習前後でどう変化するのかを調査したデータも公表された。

実習前は「怖い」「暗い」といったネガティブなイメージが先行しているのに対して、実習後は「怖くない」が最も多く、「優しい」といった回答も続き、「怖い」という回答は実習前の5分の1程度に下がったという。

現在、国内に通院および入院により治療を受けている精神病患者は、厚労省の統計によると、全国におよそ300万人おり、そのうち統合失調症の患者は約70万人とのこと。

ただし、実際には病気を隠している患者や、治療を受けていない患者がその数字の3倍〜4倍の数がいると推計される。

高橋名誉総長は、統合失調症は誰でもかかる可能性があるが、治療のゴールが症状の抑制から当事者の自立、社会参加へと変化しており、「治る疾患」という認識を高めていってほしいと語った。

また、偏見や差別を是正し、社会の許容度を上昇するためには、教育やマスメディアによる積極的な関与が必要であり、治療を適切に進め、社会復帰を実現する患者が増えることも、いわば車の両輪として重要になってくるとも述べた。

なお、財団法人精神・神経科学振興財団では、来年2月12日から14日に東京・千代田区の砂防会館にて「第6回世界精神医学会 アンチスティグマ分科会国際会議」を開く。

こうした国際会議が日本国内で開催されるのは初めて。