一向に改善しない日本の財政問題。過去にもこれを指摘する専門家は多かったが、ここへきて、その問題がクローズアップされている。


ヘッジファンドによる日本国債売りは、これまでは失敗だが…

巨額の国債残高を抱える日本に対する財政への懸念は強い。これは今に始まったことではなく、98年米国格付け会社のムーディーズが日本国債を格下げしたあたりから、すでに指摘されていた。しかし、99年あたりからの長期金利は2%以内で低位安定している。この間、海外のヘッジファンドなどは幾度となく、日本国債の売りを仕掛けてきたが、ことごとく失敗に終わっている。彼らは債券市場では "オオカミ少年" と揶揄(やゆ)された。国債暴落というオオカミは一向にやってこなかったためである。

ヘッジファンドなどによる仕掛け売りにより債券相場が下げたとしても、そこが国内投資家の絶好の買い場となった。日本国債が国内の資金でその90%以上を賄っているとともに、デフレや円高が続き、日銀による積極的な金融緩和策も手伝って資金が国債に流れ込むという構図は続いていたのである。

ところが、物価上昇などをきっかけとして、日本の長期金利が上昇し、その際に、もし「悪い金利上昇」が意識されると、金融市場に大きな動揺が走る可能性がある。

これまでは日本国債への信認というよりも、国債に資金が向かいやすい状況が、国債価格を安定させてきた。しかし、日本の長期金利の安定に寄与していたとみられる経常収支の黒字は、貿易赤字の拡大などから2010年から2011年にかけて大きく縮小するなどの変化が出ている。国内資金による国債を賄うには限界があるのも確かである。長期金利が2%を大きく超えても、政府が歳出削減や税収増などの財政再建により国債発行額を抑制する動きを強めていればいいが、もしそうでなければ、今後の国債消化に支障をきたすと投資家に認識されてしまう恐れがある。

長期金利が上昇すれば、国債の利払いで財政がさらに悪化

すでに日本国債は普通国債や財投債だけで800兆円もの残存がある。ここに政府短期証券や借り入れなどを含めれば1000兆円規模の借金が存在する。国債の年間の発行額は170兆円規模となっている。ここに長期金利の上昇が加われば、国債の利払い費を増加させ、国の財政をさらに圧迫させることになる。

長期金利上昇による国債価格の下落は、それを保有する金融機関にも影響を与える。日銀の白川総裁は3月に国会で、国債などの債券の金利がいまの水準から2%幅上がると、国内の銀行が保有する債券が12兆8000億円値下がりし、損失を被る恐れがあるとの試算を明らかにした。国債価格が下落すれば、銀行はこの価格変動リスクを避けようとして、債券先物などにヘッジ売りを入れ、さらに国債価格の急落を招く恐れがある。

日本の財政の持続性への懸念が長期金利上昇によりマーケットに広がれば、それは株安を招き、円に対しても売り圧力となる。欧州での信用不安が強まった際にユーロが下落したように、日本への信用不安が強まれば、日本国債も円も日本という国の信用が毀損(きそん)されることで、売り圧力に晒(さら)される。

現在のギリシャ国民がどのような状況にあるのかを見れば、国債急落による日本国民が受ける衝撃の大きさも想定できよう。このような事態は何としても避けなければならず、そのためには国債への信認を維持するため、政府による財政再建に向けた努力が必要となる。

しかし、信用不安に晒されたユーロ圏諸国に比べて、日本の財政再建が進んでいるようには思えない。政治家サイドには、日銀による国債引き受けなどを期待している向きもいるようだが、それが財政ファイナンスと認識されれば日本国債の信用を失う結果となり、さらに長期金利を上昇させることになるだろう。