最近のブラジルの動向を見ると、国内産業を支援するための景気刺激策が4月3日に発表されたほか、4月19日には政策金利の引き下げが行なわれるなど、動きが慌しくなっています。


「保護貿易主義」と非難されても4%成長を目指す

というのも、ブラジル経済があまりよい状況とはいえないからです。GDP(国内総生産)成長率を見ると、2010年の7.5%から昨年は2.7%に急減速しています。

ブラジル経済減速の背景には、主要な貿易相手である欧州や中国の景気減速をはじめ、ブラジル通貨のレアルが高くなっていることがあります。

業種別の成長率では、消費や金融、資源が好調な一方、製造業の伸びがイマイチ。レアル高による国内製造業の競争力低下と、為替の影響をもろに受けている格好です。

レアル高の主な要因は、先進国の金融緩和による海外からの資金流入です。ブラジルのルセフ大統領は、こうした先進国の金融緩和姿勢に対して、批判的な発言を繰り返しており、為替介入や金融取引税を強化するなど、レアル高の抑制に力を入れています。

さらにレアル高以外にも、金融緩和はインフレやバブルなどの副作用をもたらす可能性があり、インフレに敏感な新興国にとって要警戒です。

話を景気刺激策に戻すと、その内容は、?製造業を中心とした特定業種の給与税の引き下げ、?工業製品税の減税延長、?製造業向けの設備投資資金を支援するプログラムの延長、?自動車輸入規制(引き上げ税率の延長)など。雇用促進をはじめ、消費下支え、レアル高による国内製造業への影響緩和と保護を狙ったものとなっています。

これらの政策によって、ブラジル政府は2012年のGDP成長率を4%以上に回復させたいと考えているようですが、一部で「保護貿易主義」との批判も出ています。

確かに、レアル高はブラジル経済の足かせですが、「ブラジルコスト」と呼ばれる独自の環境も製造業の競争力を抑えています。インフラ不足や高金利による金融コスト、複雑な税制、労働や雇用面での過剰保護、高い社会保障コストなど、ブラジルが抱える課題は数多くあります。

土信田雅之
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト

新光証券などを経て、2011年10月より現職。ネット証券随一の中国マニアのテクニカルアナリスト。歴史も大好きで、お城巡りと古地図収集が趣味。


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この記事は「WEBネットマネー2012年7月号」に掲載されたものです。