西先生も、外銀での同僚も反米・親米どちらでもありません。

私自身も米国で生活をした実体験があるだけに一般の米国民に対しては親愛の情を持っていますし、過去に遡るほど為替介入の実績などを封印している我が国に比べれば、機密書類の全面公開に踏み切る米国の懐の深さ、公平さには敬意を表しています。

「とはいえ、米国の公式見解で日本の無力化などが出てくるものだろうか」、という当時の私の疑念を見事に払しょくしてくれたのが「國破れてマッカーサー」であったわけです。

少しだけ内容を紹介すると、例えば、戦争終結のためにはいたしかたなかったとされる原爆投下について。

日本政府は蚊帳の外のまま、日本再軍備の必要性を説く国防省(ペンタゴン)と反論するマッカーサー、1950年の日本のGNP3兆9,470億円のうち1/3を占めた朝鮮戦争特需。

占領行政の中で優先されたのは日本の教育制度の再建ですが、その教育制度を占領遂行の「道具」と言い切る電報の存在など、次々飛び出す事実には誰もが驚き、その延長線上に今の日本があることにあらためて気が付くはずです。

こうした内容は好むと好まざるとにかかわらず広く世に知られる必要があると思いますし、今の日本を包む閉塞感が何に起因しているのか、その手掛かりにもなるでしょう。

相場取引でも、国の進む道でも、我々が的確な判断を下さなければならない状況に直面した際に、真実の直視は非常に重要な指針になると思われます。

最後に打ち明け話を少々。

無条件降伏ならぬ「無条件民主化」と題された英語の論文「Unconditional Democracy」がこの本の原文ですが、米国での発表後に米国の対外諜報活動機関であるCIAが先生をエージェントとしてスカウトにきたそうです。

諜報部員となれば夢のような生活? が待っていたわけですが、米国籍となる項目も含んだ契約書にサインを求められた先生は沈黙。

出した答えは「No」でした。

CIAの誘いを断るなど前代未聞の出来事だったのでしょう、スカウトも慌てふためき理由を問いただします。

「ここで自分の国を裏切るものは、将来お前の国も裏切る、そんなやつを雇う気なのか」この言葉に当のCIAのスカウトが涙したそうです。

それから2年間CIAからのオファーを断り続け、「real last Samurai」の異名を持つ先生です。

以下は、先生から頂戴したお言葉です。

「平成は、昭和の初めではありませんので、物書きのプロは、プロのプライドを持って『真実』を武器にして戦うのです。

敵はすくんで、逃げております。

」”最後のサムライ”を前にわたくしも身が引き締まる思いがしました。

そして物書きのプロとして背中を押していただいたと受け止め、執筆に勤しみたいと思っています。