『B-CAS』カードをご存知だろうか? おそらくどこの家庭にも1枚はあるハズ。居間にあるテレビ横(裏)面に差し込まれている赤色や青色のカードだ。
 設置の際に差し込んだ後は、ほぼ、お目にかかる機会はない。何のためにあるのかというと、地デジや衛星放送を受信するための著作権保護に利用されているのだが、有料放送をタダで視聴できないのは、このカードが信号を受け取って暗号化しているからである。

 ところが先日、ネット上で『平成の龍馬』を名乗る人物が、この有料放送のスクランブル(暗号)を簡単に解除できる方法を紹介。瞬く間にその書き込みは広がって、あちこちに解除方法のまとめサイトが乱立する騒動となった。
 「駅の改札でタッチする電子マネーカードと同じように、『B-CAS』カードにはICチップが埋め込まれている。解除には、まず“ICカードリーダー”が必要で、通販サイトには当該商品への注文が殺到。1台2000円程度の商品が軒並み売り切れになり、オークションでは1万円以上のプレミアムがつく事態にまで発展しました」(マニア誌記者)

 有料の映画やスポーツを無料で観ることができるというのだから、確かにテレビ好きにはたまらない。数日間はまさに“お祭り状態”だったが、実はここに来て、その盛り上がりは急速にしぼんでいるという。
 「赤信号みんなで渡れば怖くない、とばかりに大騒ぎしていた人たちが、一転、見せしめ的に当局に逮捕されるんじゃないかという恐れから、サイトを一斉に閉鎖し始めたからです」(IT関連ライター)

 大手マスコミは、一部の新聞が淡々と事実を紹介したのみ。見方を変えれば、有料放送を不正に無料視聴する行為は、放送事業の根幹を揺るがす大問題である。にもかかわらず、あまりにもベタ記事扱いなのは、逆にこれ以上この違法な行為を拡大させてはならないという思惑があるからか。
 「そもそも無料の地上波放送も、このカードがないと視聴できないなんていうのは、日本だけのシステムなんです。その裏には、天下り団体や利権に巣食う人々の、いわばウラの思惑が隠されているんですよ」(同)

 電波利権というパンドラの箱を開けてしまった『平成の龍馬』。果たして、見せしめの逮捕が待っているのか…。それとも、「ゆるさんぜよ!」の声で時代の寵児となれるのだろうか。