サリン製造に関与したとして特別手配されていたオウム真理教元信者の菊地直子容疑者が、6月3日、殺人容疑などで逮捕された。一緒に逃亡していた高橋克也容疑者も防犯カメラに映っていた姿が公開され、警視庁は情報提供を呼び掛けている。

菊地容疑者の逃亡生活は17年にも及んだが、その大半は東京・神奈川などの首都圏で生活していたことが判明している。しかも仕事を持ち、他者との交流も少なからずあったという。はたして、指名手配犯がそんな生活を長期に渡って送ることなど可能なのだろうか。

「指名手配犯はたいてい2、3年で捕まりますが、抜け道はある」と語るのは、元警視庁刑事で犯罪学者の北芝健氏。その“抜け道”とは?

「人の出入りが多い都会は田舎よりも隠れやすい。都会の人は他人の顔をそんなに注意深く見ないし、仮に何かを感じ取っても、たいていは見間違いだと思い込んでしまう。残念ながら、それは警察も同じです。警察内には指名手配犯を追う『追跡捜査班』というチームがあり、彼らは常に指名手配犯を追っていますが、普通の警官は目の前を通ってもなかなか気づかないもの。指名手配犯が捕まるのは、たいてい市民の目撃情報がきっかけなのです」

とはいっても、指名手配された状態では住居や逃亡資金の確保が困難に思える。しかし、北芝氏によると、その両方を一挙に解決する方法があるという。

「どちらもヒモになることで解決します。ヒモなら基本的に外に出ることなく生活できますし、性欲も満たされ、寂しさから不特定の異性と接触するリスクもなくなります」

やはり“共犯者”がいなければ、長期の逃亡は難しいようだ。だが、たとえ共犯者がいなくても、普通に仕事を見つけることは十分可能だという。

「“人が忌避しがちな仕事”なら、働き口はあります。辞める人が多く臨時雇いの需要が常にあるから。専門の人材派遣会社があるのですが、写真なしの身分証で登録できることが少なくないのです。写真なしなら、年代さえクリアすれば他人の保険証で成りすましができる。そして保険証の偽造をするプロはいくらでもいます」(北芝氏)

菊地容疑者も、人の出入りが多く慢性的に人手不足な介護ヘルパーとして働き、月14万円程度の収入を得ていた。リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件で逮捕された市橋達也被告も、逃亡中は日雇い労働で稼いでいたように、当然、警察もそういった仕事に目を光らせている。だが、いまだ指名手配犯にとって「大きな抜け道」のひとつになっているのも事実だ。

■週刊プレイボーイ26号「犯罪捜査のプロが語った警察を振り切る逃亡犯の抜け道」より