賢人の名言、結局どれが真実か?

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 「名言集」「格言集」といった本は人気ジャンルのひとつだろう。しかし、名言には思わぬ落とし穴がある。名言同士で矛盾したことを言っていることがあるのだ。
 そんな偉人賢人の名言の矛盾に正面からぶつかったのが、『名言vs名言 賢者の言葉をどう人生に活かすか』(グループ・ニヒト/著、草思社/刊)である。

 例えば、ことわざでも「善は急げ」「急がば回れ」というものがある。結局、どちらが正しいんだ、と思った人は多いだろう。
 しかし、そんな矛盾を突かれたら名言の価値は下がるのだろうか?
 おそらくそうはならない。名言の背景や本質的な意味を知れば、より深く名言を理解でき、人生に役立たせることができるはずだ。

 矛盾する名言同士を“対決”させることでその奥深さを味わえるのがこの一冊だが、対決カードがなかなか面白い。
 「芥川龍之介VSユング」「井深大VSスティーブ・ジョブズ」「孔子VSクロウリー」「アウグスティヌスVSニーチェ」「宮本武蔵VS本田宗一郎」など、時代や国境を越えた異色の名言対決が並ぶ。さらに、他の名言集ではあまり見かけない言葉も取り上げられており、新たな出会いがあるかも知れない。

 名言や格言は、先人たちが残した叡智の結晶だ。表面だけをなぞるのはもったいない。
 本当に名言から人生のヒントを得たいと思うなら、自分自身で考えることも必要だ。

 アメリカの作家、アンブローズ・ビアスの言葉に「格言――弱い歯向きに骨抜きにされた人間の知恵」というものがある。昨今で取り沙汰される名言は、短いフレーズでわかりやすい反面、多くのことが削ぎ落とされて軽くなっているともいえる。
 賢者たちの言葉を自分の人生に活かすために、言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、本書のようなアプローチから吟味してみるのも大事なことだろう。
(ライター/大村佑介)