過去最大の赤字を計上したパナソニックでは、2月28日、大坪文雄社長(左)が会長に就任し、津賀一宏専務(右)が6月27日付で社長に昇格する人事を発表。グローバルシフトはより加速していきそうだ。

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シンガポール、中国、香港……生産拠点のみならず、本社機能の一部も海外移転する製造業が急増している。この「大移動」は、国内雇用や下請け、そして日本経済にどのように影響するのか? 最前線をレポートする。

「(業績悪化による)責任の重さを痛感しています。新たな事業モデルをつくり、収益構造の変革を急ぎ、業績のV字回復を果たしていきたい」

2月3日、パナソニック東京本社。2012年3月期連結最終損益の赤字額が7800億円になると発表した記者会見の席上、大坪文雄社長は厳しい表情で言葉を紡いだ。記者たちからは、矢継ぎ早に厳しい質問が飛び交った。

業績予想を大幅に上回る赤字額は製造業として過去最大規模――。発表する大坪社長自身でさえ、予測の2倍近い赤字額という現実を前に、夢かうつつか半信半疑の状態だったのかもしれない。

歴史的な円高、景気の減速、タイの洪水被害というトリプルパンチに加えて、テレビ事業の不振、東日本大震災が追い打ちをかけた。三洋電機を買収した際に発生した「のれん代」の減価償却処理費も大きく影響したといわれている。

ほぼ同時期にソニー、シャープの巨額赤字も発表され、テレビ事業などの耐久消費財で発展してきた日本の家電メーカーの凋落ぶりが浮き彫りになった。

2月28日、パナソニックは大坪社長が退任を表明。後任には、テレビ事業の構造改革などで手腕を発揮した「切れ者」と評判の津賀一宏専務が就任する。新社長のもと、進められていくべき改革の最重要テーマとして、注目されているのがグローバルシフトだ。

11年9月、パナソニックは国内にある部品や原材料の調達・物流本部機能を12年4月にシンガポールに移転すると発表。調達部門に関しては海外調達部材のグローバル活用を拡大するため、契約から調達までの一気通貫の体制を構築する。物流についても、完成品、部材ともにアジア発の物流量が増加していることを背景に、物流体制を一元化する。

家電に限らず各企業とも、これまでにもコスト削減や急激な為替変動のリスクを回避する策を講じ、海外生産の拡大や海外部材の調達を増やしてきていた。だが、今回のように本社の機能そのものを国外に移転するのは異例のことだ。同社では今春、調達と物流両部門の社員約20名もシンガポールに異動したという。

同社と前後して、光学機器メーカー・HOYAの鈴木洋最高経営責任者(CEO)が自ら仕事の拠点をシンガポールに移し、日産自動車もインフィニティ事業部を丸ごと香港に移すなど、本社機能の一部海外移転を発表する企業がこの1、2年で相次いでいる。

本社機能まで海外に本格移転するとなれば、国内の産業空洞化に拍車をかけるのではないかという懸念や、人員削減につながるとも受け取られかねない。

しかし、こうした動きはますます加速していきそうな状況だ。円高という向かい風の中、日本企業独特のビジネススタイルが「ガラパゴス化」の引き金となり、韓国勢や中国勢に追い上げられているからだ。グローバル人材を採用し、「地産地消」の広い視野に立って海外で勝負していかなければ、もはや国際競争には打ち勝てないとの危機感も広がっている。

そんな矢先のパナソニックのセンセーショナルな発表だった。その狙いは、一体どこにあるのだろうか。

※すべて雑誌掲載当時