早見純で、ついにエロ漫画に目覚めました。


 「僕、エロ漫画って苦手だったんです」(金田さん)

 前回に引き続き、THEラブ人間・金田康平さんの読書遍歴。エロ漫画がどうも好きになれないという人にぜひ薦めたい、ちょっと荒療治な一冊の話から(無理に好きにならなくてもいいですけど)。

 「オワリカラというバンドのタカハシヒョウリから薦められて読み始めたんですが、早見純の『ラブレターフロム彼方』。これで僕はエロ漫画に目覚めましたよ!」


 1980年代、エロ劇画界で衝撃のデビューを飾った、エロ(鬼畜)漫画家の早見純さん。『ラブレターフロム彼方』は、早見さんが90年代に一度断筆するまでに発表した作品を選りすぐった、早見純ベスト的な一冊です。

 「エロ漫画って普通は抜くために買うもんですが、これは絶対に抜けないですよ、怖いから。血まみれだし、女性がみんな死ぬんです。殺されたり、犯されたり、虐待されたりということを描いている、とにかく残酷で史上最悪な漫画です。でも、すごく残酷なんだけれど、僕はこれを読んで初めてエロ漫画の良さがわかったんです。正直、それまで読んできたエロ漫画って、読んでいて汚いなって思ってしまったりしてたんです。けれど『ラブレターフロム彼方』は違う。やりすぎればやりすぎるほど、エロ漫画は面白いんだって気付かせてくれました。もう、極地まで行ってしまってるんですよ」

 また同時に、同じ表現者として、このぐらいまで行けたら素晴らしいだろうなとも、思うのだそうです。

 「早見さんは一度断筆されていますが、自分の想像力の極限までを追求し尽くして、それ以上生まれなくなるぐらいの作品を描いてしまったからだと思うんです。僕もそこを目指したいと思っています!」


 というわけで金田さんはこれからエロ漫画を掘る! そしてエロ漫画を堀りつつ、長い休みがとれたならパリに行きたい! そんなふうにも思っています。

 「20歳の頃にインドに行って以来、海外というとどうもアジアがぱっと頭に浮かんでしまうんですが、この間僕のおじいちゃんとおばあちゃんが昔ふたりでパリに行った時の写真を見ていたら、急にパリスイッチが入りまして。そこで買ってきたのが、やまだないととナツヨウコの共著『パリの友達』。やまだないとは昔からずっと好きで、全作品を持っているんですが、これだけはあまり興味が持てていなかったんですよね」

 単なるパリガイドではなく、パリに住む「彼女」の暮らしをリアルに綴った、パリの女の子の物語。旅というより暮らしたくなる、パリの本です。

 「パリという街にはこんな人たちが住んでいて、こんな景色が流れてるってことが書いてある。例えば、ストが起きて街が一日止まってしまう話とか。場所とかお店のことは、全然書いてないけど、ほんとの意味でのガイドブックってこういうものなのかなって思いましたね」


 ところで、眠気と限界まで闘いながら本を読み、パタッと眠りに落ちる時間が至福という金田さん。最後は、大学生の時に経験した、本にまつわる最高の眠りの話で終えたいと思います。

 場所は大学の大教室。ペットボトルに水の代わりに焼酎を入れてちびちび飲みながら、大嫌いな哲学の授業の時に金田さんが読んでいたのは、宮沢賢治の『春と修羅』でした。

 「ちょうど入学したての春の頃で、窓の外には桜が咲いていました。そこで焼酎飲みながらひとり花見をしつつ、『春と修羅』を読んでいた時の眠りは、過去最高でした。詩の内容と外の桜がリンクしていたのがなんだかよかったし、そのまま寝ちゃって次の授業の人に起こされたのもなんだか気持ちがよかった。ほんとにいい時間でしたね」


 鬼畜エロから、幸せの眠りまで。本ってほんとに様々な体験をさせてくれるから、やめられない。金田さん、ありがとうございました!


金田康平(かねだ・こうへい)
1986年東京生まれ。1999年に音楽活動を開始し、2009年に下北沢でフォークロックバンド「THEラブ人間」を結成。ライブや自主製作盤の制作などを精力的に行い、2011年夏に5曲を収録したEP『これはもう青春じゃないか』でメジャーデビューを果たす。THEラブ人間では、作詞作曲と歌を担当している。最新作は、今年5月に発表したメジャーファーストアルバム『恋に似ている』。現在「THEラブ人間 リリースツアー2012『恋に似ている』」も全国で敢行中!

取材・文=根本美保子



『一流選手の親はどこが違うのか (新潮新書)』
 著者:杉山 芙沙子
 出版社:新潮社
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