中1の時に好きになった本を、ずーっと読んでる。

 恋愛至上主義を掲げる音楽集団「THEラブ人間」で、すべての曲の作詞作曲と歌を担当している金田康平さん。大好きな音楽以外の唯一の趣味は、中学1年生の時からずっと続けている読書です。

 「中1の時からずっと体にしみついてるのが、どこかに出かけた帰り道には絶対に家の近くの古本屋に寄り道すること。昨日と今日で、街のちっちゃな古本屋の品揃えなんて、変わるはずもないんだけど」(金田さん)


 お金を使うものといったら、本とレコードぐらい。なかでも、店主のおじさんが一人でやっているような個人経営の古本屋さんに、ちょっと怖いもの見たさで行くのが好きなのだとか。ちなみに行きつけは、清瀬の家の近くにある古本屋。

 「中1から通っているけど、店の名前も知らないんだよなー」


 「中1の時に読んで好きになった本が、今でもずっと読んでる本」。そう、金田さんは言います。村上春樹の『風の歌を聴け』はそのひとつで、何度も買い直しながら、今に至るまで読み続けています。

 「僕、すぐに本をボロボロにしちゃうんです。1ページずつ読みたくて本を逆に折り曲げて持つせいで、ノドの間から糸が見えてきちゃったり、ページが取れてどこかへ行っちゃったり。だから、同じ本を何冊も買い直しています。なかでも最高にたくさん買ったのが『風の歌を聴け』。安いし、どこにでも売っている。新幹線の車内販売でも売っているから、手持ちぶさたな時なんかについ買ってしまうんですよね。結果、家にすごいたまってます。ボロボロのが10冊以上、健全な状態で5冊ぐらい。短い小説なので、文章をほぼ覚えてしまっているぐらいです」
 
 『風の歌を聴け』を暗記......かなりの強者です。でも、何度も読んでも飽きない魅了されるワケは何なのでしょうか?

 「『風の歌を聴け』、僕は青春小説だと思ってるんですが、その読後感が、甘酸っぱいを通り越して、苦じょっぱいんですよね。東京の大学に行っている主人公が、夏の間だけ神戸に帰る。そこで親友のねずみと一緒に、車で公園に突っ込んだりビールを飲んだり、傷ついたり、傷つけられたり。思い出したくもないような苦じょっぱい夏だったけど、夏が終わったら東京に戻って、そんなこともすぐ忘れちゃうんだよなって。そういう思い出にもできないような日々のことを青春って呼ぶんだろうなって、思うんですよね」

 そして同じく、中1の時からずっと読んでいるのが、リチャード・ブローティガン。特に大好きなのは『西瓜糖の日々』で、『愛のゆくえ』は最近7冊目を買いました。

 「中1の時からずっと思っているのは、単純に"格好いいな"っていうこと。文章と設定がとにかく格好いいんですよ。『愛のゆくえ』は、最初のページに書かれている言葉を読んだだけで、この本を買ってよかったなって、毎回のように思わされるんです。でもね、この本にかんしては、正直なところ何度読んでもずっとわからないんです。読み終えるといつも心にしんと静けさが残るんだけど、それが何なのかわからない。だから、いつか紐解いてやろうと思ってますよ」 


 ちなみに、好きな言葉には線を引きながら読む。これが金田さん流の本の読み方ですが、読書で培った言葉に対する愛着やこだわりは、THEラブ人間の曲にも大きく影響しています。

 「THEラブ人間というバンドは、曲のタイトルや歌詞をすごく重要視しています。それはやっぱり、ずっと読んできたブローティガンやフィッツ・ジェラルド、ケルアックや春樹の小説からの影響が大きいと思いますね。言葉ひとつで気になる、聴いてみたくなる。そういうことを大切に考えているんです」

 後編は、金田さんがエロ漫画に目覚めた話!? お楽しみにどうぞ。





金田康平(かねだ・こうへい)
1986年東京生まれ。1999年に音楽活動を開始し、2009年に下北沢でフォークロックバンド「THEラブ人間」を結成。ライブや自主製作盤の制作などを精力的に行い、2011年夏に5曲を収録したEP『これはもう青春じゃないか』でメジャーデビューを果たす。THEラブ人間では、作詞作曲と歌を担当している。最新作は、今年5月に発表したメジャーファーストアルバム『恋に似ている』。現在「THEラブ人間 リリースツアー2012『恋に似ている』」も全国で敢行中!

取材・文=根本美保子



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 出版社:新潮社
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