『コミックふるさと 北海道』安彦 良和、 唐沢 なをき、篠 有紀子、 香山 梨緒、荒川 弘、モンキー・パンチ、大和 和紀、布浦 翼、 前川 たけし、恵三朗、青空 大地、いくえみ 綾/マガジンハウス

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こんにちは!北海道特派員のたまごまごです。

さて、北海道って思ったより方言ないんですよ。方言臭くない、というか、東京弁に近いんですよ。
くまのこと北海道弁で「山親爺」っていうらしいですが、そんなのいう人いないよ!
「なまら」もあんまり使わないですねえ。「なんますげぇ!」とかは言うかな?言わないかな?人による。
つまり他の地域ほど、方言は色濃くないんです、意外と。

ところがですね、ひょんなところで、「これ北海道弁なの!?」と驚かされることが多々あります。
たとえばぼくのばあい、よく使っていたのは「ゴミをなげる」「かっちゃく」。
それぞれ「ゴミを捨てる」「ひっかく」という意味なんですが、ぼくは完全に標準語だと思っていたので、首をかしげられた時に首をかしげ返したものです。何で通じないの?
こういう経験を繰り返して、故郷愛というのは強くなるものなんです。なんか逆に「北海道ではこう言うんだぜ!」って使いたくなるじゃないですか、かっちゃく。

そんな北海道愛がつまったコミックスが発売になりました。
『コミックふるさと 北海道』です。
参加しているのは、安彦良和、荒川弘、モンキー・パンチ、唐沢なをき、いくえみ綾と、まあまあなんとも豪華絢爛な面々。
北海道ゆかりの作家12名が集まって、コラム、エッセイマンガ、北海道を舞台にしたマンガを描いています。
上のラインナップを見て分かるように、かなり内容はフリーダム。
唐沢なをきが真面目なエッセイマンガなんて描くわけがなく、知床でアザラシを操縦して、流氷の下に渦を作って魚を採る「うずまき漁」の様子を描いています。
そんなんないわ!
一方、安彦良和の作品「箱馬橇」は、僕が知らない時代の遠軽町(大雪山の東側、網走よりのところ)を描いています。
えらく単純な作りでできていた、干し草などを運ぶ馬橇(ばそり)。馬が引っ張るんですが、これに箱をつけると北海道ならではの乗り物になります。
それを調べて描くのではなく、あくまでも安彦良和が思い出して描くのがいいんですよ。移動する時に乗る、乗るとなると寒いから毛布とか湯たんぽを積み込んで8kmの道のりをレッツゴー。
ぼくは馬橇を見たことも乗ったこともないのですが、その時に安彦良和が何を見たのか、どんな印象を抱いたのかが克明に描かれているんです。オチも含めて、リアルに北海道で生きていた人だからこそ描ける思い出です。

個人的に道民としてのシンパシーを感じたのはいくえみ綾の「思い出アレコレ」というエッセイマンガ。
だっていきなりオープニングで「生粋のどさんこなので、毎日どさんこワイドをみています」ですからね。
見てる見てる! 奥様ここでもう一品!
岩見沢(札幌のとなりのとなりくらいの町。豪雪地帯)では、雪の塊を子供たちが踏み固めて、通学路になるとか見た見た、経験した。あるある。
そして、北海道弁事件。東京在住の人に「席ばくっちゃっか?」と言ったら通じなくて大変なことになった、という話しなんですが、ああーそうか、「ばくる」って通じないんだね、と改めて再認識。
「ばくる」とは「取り替える」という意味で、ぼくは幼少期に当たり前に使っていたので全然気づきませんでした。「ビックリマンシールばくって!」とか毎日言ってましたから。
本州の人に指摘されるまでわからなかったなあほんと。

香山梨緒の「ローソク出せと織姫さま」では、北海道ローカルな七夕について物語で描いています。
御存知ですか、北海道の七夕って7月7日じゃなくて8月7日なんですよ。
また、ハロウィンは特にやらないけど、同じようにしてお菓子をもらってまわる「ローソク出せ」っていう風習が子供たちの間にあるんです。コレ本当にあるんです。
「ローソク出せ、出せよー、出さないとかっちゃくぞー」
こういうと家の中からお菓子を出して子供にあげるんだ。うわーなつかしー。今でもあるのかな。僕が子供の頃はありました。

モンキー・パンチの文字コラムが載っているは本当に貴重。北海道だったからこそ「ルパン三世」ができた、というエピソードがつづられています。
例えば霧の中に佇む五エ門のシーンがありますが、これは彼の出身地浜中町が霧の深い街だったから。また、低地でありながら高山植物が生えるというのを、ルパン三世の作中で幻の万能薬草のマンガのネタにしたということも。
「大都会のように過剰と思えるほど多すぎる情報よりも、少ない情報だったから自分に本当に必要なものを選べたような気がするからね。多すぎると埋没して迷いが出てくるしね」
確かに北海道は、田舎に行くと何もない。しかしそれが創作の土壌になるのではないかというモンキー・パンチの言葉は、道民としては嬉しい事この上ないです。
「いつか、”銭形警部は花咲ガニが大好物”という話を作ろうかな」
是非作ってくださいな!

まさに、北海道に住んでいなかったら描けなかった話が山ほど載っています。
道民ならニヤニヤしながら「あるある」と笑いながら読めますし、北海道を知らない人は「異文化!」と楽しめると思います。
同時に「コミックふるさと 福岡」では、松本零士やわたせせいぞう、国友やすゆきなどこちらもそうそうたるメンツが顔を連ねているので、読んでみるといいでしょう。
これ、シリーズ化して全国やるんですかねえ。
あ、もう一つ、これは面白かったがゆえのわがままですが、北海道の漫画家はもっともっといっぱいいるので(島本和彦とか)、「コミックふるさと北海道2」希望です。

『コミックふるさと 北海道』

(たまごまご)