5月12日深夜、東京・西麻布にあるクラブ『alife(エーライフ)』が、地下1階に無許可で踊り場やDJブースを設け、客をダンスさせた罪で、運営会社社長と店員が現行犯逮捕された。

なぜ、クラブで「ダンスをさせた」ことで罪に問われるのか。クラブ事情に詳しい弁護士の齋藤貴弘氏がこう解説する。

「店内に設備を設けて客にダンスをさせ、かつ飲食物を提供するクラブは、風営法が定める三号規定に該当し、公安委員会に届け出て営業の許可を取らなければなりません。許可を得ると、午前0時以降(繁華街などは午前1時以降)は営業できない決まりです」

つまりクラブという業種は、マジメに許可を取ると、深夜は単にお酒や食べ物を提供するだけの店となってしまう。そのため無許可営業店が数多く存在しているが、騒音などの目立ったトラブルがなければ取締りはせず、黙認する状況が続いていた。

それも数年前から流れが一変。2010年10月に東京・六本木の『911Black』が摘発されてから、現在まで大阪、京都、名古屋、福岡など全国で20以上ものクラブが風営法違反で摘発されている。

だが、そもそもなぜ風営法は、深夜にダンスすることを規制するのだろうか。警視庁・広報課の担当者が、“ダンス”の解釈についてこう答える。

「風営法が定める“ダンス”は、ワルツやタンゴ、タップダンス、ジャズダンス、盆踊りなど、すべてが該当する可能性があります。また、踊りをさせる営業形態が享楽的雰囲気を醸成するなど、善良な風俗を害する恐れがあると認められる限りにおいて、風営法の定める“ダンス”に該当します」

つまり、ダンスには「享楽的雰囲気で善良な風俗を害する」恐れがあるということ。ある衆議院議員の政策秘書を務め、風営法のあり方に問題提起を行なうI氏は、これに首を傾げる。

「一連のクラブ摘発の根拠になっている風営法ができたのは1948年。クラブが存在しなかった戦後の混乱期、売春婦がダンサーとして客を取っていた時代に風紀を正す目的で制定された法律です。でも、今やダンスが中学校の必修科目になる時代。60年以上前の問題をあてはめて現在も規制するのはおかしな話です」

かなり時代遅れの法律に縛られているのが現状のようだ。では、どんなダンスが善良な風俗を害するのか。『alife』の従業員K氏が、摘発時の様子を打ち明ける。

「摘発を受けたとき、現場の捜査員は『カカトを床から浮かした時点でアウト』と言ってました。あと、取ってつけたように『肩を揺らしたら』とも」

捜査員がこれでは、ダンスの何が悪いのか誰にもわかるはずがない。

(取材/興山英雄)

■週刊プレイボーイ25号『激増する「風営法違反・ダンス狩り」からクラブを守れ!!』より