もし橋下市長が、このような全面的調査に乗り出すとすれば、大阪の恥が満天下に晒され、市長にもそれなりの覚悟が必要になる。その覚悟がないのなら、入れ墨調査は一部問題職員に対するレベルの低い脅しといわれても仕方がないというわけだ。
 そして、その脅しこそが最大の目的、という声も上がっている。
 「市長は、入れ墨を消さない職員は配置転換する、と言っています。『言うことを聞かないヤツは許さない』−−橋下市長が言いたいのはそっちです。入れ墨を見せて子供を脅す行為は、もちろん許されない。市長の権威をもってすればそれだけで十分なはずなのに、配置転換まで持ち出すのは、これはもう脅しですよ」(元市会議員)

 市長に対するブーイングは、最大のターゲットにされた現業系職場の周辺からも上がっている。
 「不始末をしでかした人間が、心機一転の場に大阪市を希望し、大阪市もこれを受け入れた。ええことやと思うし、昔は目立たない部分で、そういう温かい話があった。一罰百戒、一時が万事やなくて、もう少し弾力的な考えができないものか…」(ある団体役員)

 脅しか、それとも単なる綱紀粛正か? いずれにせよ、“やりすぎ”は大阪市のイメージダウンにつながることは明らか。
 今回の入れ墨調査は、先に行われた選挙に関する実態調査、国旗国歌の斉唱チェックに続く、橋下流思想調査の第3弾になる。選挙、国旗、入れ墨、みんなそれぞれ立場が違い、利害も絡む。それをわかった上での調査なら、さすがは橋下市長というべきか。
 調査に関しては「密告を奨励している」との噂まで飛び交う始末。橋下市長は昨年のダブル選挙で「こんな可愛い独裁者はいない」と良い子ぶっていたが、可愛くても独裁者は独裁者。「いよいよ正体を現した」の声がしきりだ。

 これに対し、今まではバラバラに動いていた「反対」の声が、ここにきてまとまった動きを見せ始めている。
 「市長が職員の汚点を晒すというのなら、我々も力を合わせて暴君ぶりを知ってもらってもいいのではないか、ということです。市長が市長だけに、どこまでやれるかはわかりませんが、救済措置の情報交換や、街頭での署名活動など、やれるところは一緒にやりたい」(組合関係者)

 「調査内容は公務員として当然のこと。正しいことをして何が悪い」とでも言いたげな橋下市長。国政進出を睨む一方で、“橋下独裁節”は加速する。