金環日食や東京スカイツリーの開業など、「歴史的瞬間」に恵まれている2012年の日本。かつて今年以上に日本中が沸いた「歴史的瞬間」があるとすれば、1966年6月のビートルズ初来日がその最たるものと言えるのではないでしょうか。

 人々を大熱狂の渦に巻き込んだビートルズのワールドツアーでしたが、その後彼らはスタジオにこもっての制作に没頭していったといいます。そのビートルズの転機にもなったアルバムの名を冠した長編小説『ラバー・ソウル』は、なんとビートルズを融合させた異色ミステリー。自身が筋金入りのビートルズファンでもある井上夢人氏の実に2年ぶりとなる長編小説です。章タイトルにはビートルズの曲名が付けられ、ファンなら思わずニヤリとしてしまうネタが随所に散りばめられています。

 この物語を不穏な展開に引きずり込んでいくのは、ビートルズオタクな"ストーカー"の恋。職歴無しで引きこもりの36歳、みにくい容姿と異様な風貌の主人公・鈴木は、ある事件をきっかけにモデルの絵里を車で家まで送り届けることに。美しい絵里が助手席に座ってくれたという喜びに震える鈴木は、監視カメラと盗聴器で彼女を「見守る」使命感にのめり込んでいきます。そしてこの日を境に、絵里の周囲で次々と起こる殺人事件......。

 そんなストーカー・鈴木の想いがエスカレートし狂気すら帯びていく中、読者はふと自分が何かに騙されていることに気づきます。SIDE A/Bと分けられた意味深な章立てと、供述形式のセリフが巧みに絡み合う展開に翻弄され、一体何が真実で何が虚構なのか頭を抱えてしまうはずです。

 井上氏がこだわった本書の発売日である「6月6日」という日付、そしてタイトル『ラバー・ソウル』が意味する一つの数字――作品を丸ごとキーに井上夢人氏が仕掛けた秘密を知ったとき、あなたは少し、背筋が寒くなるかもしれません。



『愛されるアイデアのつくり方』
 著者:鹿毛康司
 出版社:WAVE出版
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