肺がん罹患率を急上昇させる「COPD」という脅威〜その現状と対策とは?

写真拡大

5月30日、気管支喘息とCOPDの専門医団体である日本喘息・COPDフォーラム(以下JASCOM/ジャスコム)と、外資系製薬メーカーのグラクソ・スミスクライン株式会社の共催で、「肺がん検診を生かしたCOPDの早期診断」と題されたセミナーが開催された。

「がん」「心疾患」「脳血管疾患」が数十年以上も日本人の死因の上位を占める一方、年々増加中なのが「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease/慢性閉塞性肺疾患)」という疾患だ。

同疾患の死亡者数は、2010年で約16,000人。

日本人の死因の第9位へと上昇している。

同セミナー内で公演を行った、JASCOM COPD領域代表である東京女子医科大学統括病院長の永井厚志氏によると、COPDとは、慢性気管支炎や肺気腫など、気道や肺胞などに炎症が発生し、長期にわたって気道が閉塞状態になる病気の総称のこと。

徐々に呼吸機能が低下していき、進行度合いによっては呼吸不全に陥り、死にいたるという。

厚生労働省の調査などによれば、2010年の時点で死亡者数は約1.6万人と年々増加傾向にある。

推定患者数530万人に対し、治療中の患者はわずか17.3万人。

治療していない患者の多さがあげられる。

これは、COPDの主な症状が「せき、たん、息切れ」などのため、単なるかぜと片付けられたり、ごくありふれた症状で見過ごされがちなため、疾患発見の遅れにつながっているからだ。

厚生労働省の専門委員会がまとめた「健康日本21」では、2022年度までに、COPDの認知率を現状の17%から80%まで引き上げることを目標としている。

また、COPDは肺がんをはじめ、さまざまな併存・合併疾患の誘発リスクがあるという。

COPD患者は、患者でない人に比べて5倍も肺がんに罹患しやすいことがわかっているとのこと。

軽症であっても肺がん罹患率は高く、若年齢でも無視すべきで疾患ではない。

さらに、COPDと肺がんが併存しているケースでは、肺がんのみの患者の7倍も死亡率が高くなるそうだ。

特に「長期の喫煙暦がある人は、COPDを疑うことが重要です」と永井先生。

現実的に見て、日本におけるCOPD患者の9割は喫煙者であることからも、肺がんの罹患・死亡リスク軽減のためには、COPDの主原因である喫煙をやめるための治療・啓蒙活動などの取り組みが重要となる。

さらには、「いかにCOPDを早期発見・治療するか」といった医療システムづくりも大きなカギを握っているといえる。

現在の肺がん検診は簡易なこともあって、受診率は比較的高いものの、発見率はきわめて低い。

この問題に対し、東京女子医科大学八千代医療センター呼吸器外科教授の関根康雄氏は、主因のひとつに胸部レントゲンの精度の低さがあるとした上で、それを補うことが可能な、問診票のCOPDを示唆する質問項目があるにもかかわらず、有効活用されていない点を指摘する。

こうした現状に対し、関根氏は、「肺がん検診の問診票を利用したCOPDスクリーニングによる患者発見の新たな仕組みづくり」への取り組み例として、「千葉モデル」を紹介。

これは、千葉市医師会、千葉市、ちば県民保健予防財団が共同で立ち上げた「千葉COPD肺癌スクリーニング研究会」による、「全国初の体系的なCOPD患者抽出とフォローアップシステム」である。

具体的には、千葉市における住民・企業の肺がん検診において、COPD患者発見に適した形の検診表を作成。

年齢や喫煙暦、呼吸器の症状など、4つの問診項目すべてにあてはまる人については、CTなどの精密検査を行うことで、COPD患者の絞込みを行うというものだ。

これにより、COPD患者の早期発見および治療が促進されるとともに、患者に対する定期的な検診も可能となることから、肺がん患者の早期発見および治療にも有効な手段といえる。

実際、取り組み開始から3年目となる平成22年度には、肺がん検診を受けた89,100人のうち、問診内容から要精密検査となったリスク患者が1,170人(1.3%)、さらに実際に精密検査を受診した551人のうち、138人がCOPD/肺気腫と診断されているとのこと。

今後の展望については、「まずは千葉市で実績をつくり、呼吸器学会などの後押しを受けながら全国へ広めていきたい」と関根先生。

早期の実現を願うとともに、一般レベルでも、セルフメディケーションの観点からCOPDへの認識を深めていくことが大切だといえる。