インターネットでの異性との出会いは、ここ数年で随分と市民権を得たのではないでしょうか。ネットがきっかけで出会い、結婚したという話は、珍しいものではなくなりました。しかし、トラブルになったという声も比例して多くなっています。ネットが身近になった今、どの情報をどこまで公開するのか、正しい判断が必要とされています。

 最近の調査では、今年の1月、McAfeeが米国の13〜17歳の男女約1000人を対象に「ネットでの出会い」について質問したところ、80%がソーシャルメディアを利用していて、30%はFacebookで恋人を探すと回答しています。その結果、女子の34%、そして、男子の16%が意に反して異性に目を付けられました。不快な思いや怖い思いをした人も多いと報告されています。

 そういった調査結果からか、逆にネットでの出会いを全く求めていない人もいます。ネットの世界とは一線を画して、静かな生活を送っているのです。直木賞作家の井上荒野氏の書籍『夜をぶっとばせ』に登場する主人公・たまきもその一人と言えるのかもしれません。

 たまきはネットの使い方さえさっぱりわからない35歳の主婦。しかし、その家庭環境は少し複雑。長男が学校でいじめにあい、娘は5分おきに石鹸で手を洗うなど不安定な一面をもっていました。また、自称フォトグラファーの旦那は、たまきがパソコンに熱中しだした頃から、毎日たまきをレイプするようになりました。

 そんな苦しい毎日が続くある日の夜、「どうにでもなれ」といった心境になったたまきは、思い切ってネット掲示板でメル友を募集することにしました。

 「三十五歳。主婦。水瓶座。いいことがひとつもありません。誰か助けに来てください。」

 ネット掲示板に書き込んだ短い文章。しかし、この文章がきっかけで、たまきの人生は変わり始めるのです。結果的に、その書き込みが良かったのか、悪かったのかは、判断の難しいところではありますが、ネットで異性を知りあっていく時の高揚感は、共感できるものがあるのではないでしょうか。

 『夜をぶっとばせ』は、直木賞作家の井上氏が掬いとる、明るくも心が痛くなる独特な恋愛小説です。



『夜をぶっとばせ』
 著者:井上荒野
 出版社:朝日新聞出版
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