日本人がもっともよく食べる果物は何でしょう? 意外と知られていませんが、この答えはバナナ。日本人のバナナ消費量は2004年にみかんを抜いてから、7年連続で1位をキープ(総務省統計局調べ)。手軽な価格設定だけでなく、栄養にも優れており、女性やスポーツ選手も好んで食べる人気の果物です。

 そんな日本人に身近なバナナについて詳しく紹介しているのが、書籍『バナナの世界史』。同書によると、バナナが初めて栽培されたのはなんと七千年前。現在では、果物として世界最大の生産量を誇り、農作物としても、小麦・米・トウモロコシに次いで、世界で四番目に多く栽培されています。

 商業的に奇跡と呼ぶべき成功をおさめたバナナの歴史は、複雑でいて豊か。アメリカでももっとも売れる果物として君臨しているバナナ。それまで1位だったリンゴは、米国の大半の都市から数時間のところで収穫できましたが、バナナは熱帯地域で栽培されているので、何千キロも離れた場所から移送する必要がありました。また、腐りやすさという点もネックに。そんな問題をクリアするため、チキータ社やドール社の先祖である企業は、熱帯雨林を伐採し、鉄道を敷き、何もないところにバナナのために町を作ってしまいました。そこで、消費地の市場までの長い距離を運ぶあいだに、熟成を遅らせるようコントロールする方法を編み出したのです。

 バナナが登場したことで、その地域の文化が変わってしまったことも。エデンの園でエバが最初に口にした果物はバナナだったという説が登場し、アフリカのヴィクトリア湖周辺諸国で「食べ物」を表す言葉は、スワヒリ語で「バナナ」を意味しています。また、バナナ・プランテーションの掌握権を求めて争った結果、1950年代にグアテマラで初めて民主的に選出された政府が倒れたり、1980年代にはマヤ族の虐殺が起こりました。

 ホンジュラスのバナナ農園で働く人々は、その過酷な条件下での労働をテーマにした叙情的な小説や歌を創り、チキータ社会長は、会社の政治的策略が暴露されるのを恐れて高層ビルから身投げするなど、様々な歴史を生み出しました。

 バナナに翻弄された人たちの歴史はこれだけではありません。知られざる生態と暗黒の歴史など、着目すべき点は多々あります。一言では語れないのも、バナナの魅力の一つなのでしょうか。今となってはありふれた果物となっているバナナですが、その歴史も噛み締めながら味わってみるのもいいでしょう。



『バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)』
 著者:ダン・コッペル
 出版社:太田出版
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