原発事故の賠償金は、現在一人当たり月10万円。もちろん赤ん坊から老人まで一律だ。さらに避難により職を失った場合は、その給料分も全額保障されている。バラマキストと揶揄される政府・民主党は先日、長期にわたり帰宅が困難になる区域については、精神的な損害の賠償を5年分一括して支払い、金額を一人当たり600万円とすることなどを、今後の指針に盛り込むことに決めた。

 同じ震災被災者の中で、福島原発の被災者は格段に厚遇されているという批判がある。そんな声を確かめるため、帰宅困難区域から多くの人が避難をしているいわき市内へ向かった。
 あまり大きく報道されていないが、いわき市の渡辺敬夫市長は同市に避難している被災住民について、「東京電力から賠償金を受け、多くの人が働いていない。パチンコ店も全て満員だ」と苦言を呈している。市民から「避難者は仕事もせずにパチンコばかりしている」という声が寄せられているといい、市長が感情的な行き違いなどを憂慮しているのだ。

 日曜日ということもあるのだろう。某パチンコ屋は確かに満員だった。店内で、双葉町から避難して来たという元トラック運転手を見つけて話を聞いた。
 「賠償金、全然足りねえよ。家も仕事も失って、そこでやり直すこともできないんだ。どれだけ迷惑をこうむったと思っているんだよ」

 一方、こんな声があったのも事実だ。
 「原発マネーで道路がやたら舗装されていたり、街灯はたくさんあるわ、役所の施設は豪華になるわといい思いをしてきた。ある意味で原発に依存し過ぎました。これからどう『原発抜きで暮らす』のか心配ですけどね」(いわき市の自営業者)

 いわき市には、もう一つ懸念がある。原発被災者は医療費が無料ということで、市内の病院は大変な患者数だというのだ。
 地元紙の記者が、こんな噂話を教えてくれた。
 「歯石の除去に週3回通うご婦人、エステじゃないっての。それから、どこかのお坊ちゃまらしいが、中学生くらいの子が耳掃除だけしにくるとか。大きな病院のロビーは、ご老人のサークル活動の集会場と化しているらしいよ」

 福島県内最大のいわき市は約2万5000人の原発避難者を受け入れている。どうやら元からの住民との間で摩擦が起きているのは事実のようだ。双葉郡の自治体が集団移転する「仮の町」の候補地に同市が挙がっていることについて、渡辺市長は理解を示しつつ、「市の将来計画や地域コミュニティーに大きな影響がある」とも語っていた。