ある民族楽器に伝わる哀しい民話
 「馬頭琴」という弦楽器を知っていますか? モンゴルを代表する民族楽器で、「モリン・ホール」とも呼ばれ、楽器の棹の先端が馬の形をしていることからこの名前が付けられたといいます。弦は2本あり、それぞれナイロンもしくは馬の尻毛が束ねられて作られています。馬を家族のようにして愛するモンゴル人ならでは楽器と言えます。

 そんな「馬頭琴」はどうして作られたのか。モンゴル人の民話として語り継がれてきた、ある哀しい民話があります。それが『スーフと白い馬』(いもとようこ/文・絵、金の星社/刊)です。

 昔、モンゴルの草原にスーフという、貧しいひつじかいの少年がいました。スーフは歌が得意でした。彼がひつじを追っていくときの歌声は風に乗って草原を流れ、ひつじたちも草原に生きる人たちもうっとりします。
 ある日、夕暮れになってもスーフは家に戻りません。スーフのおばあさんが心配していたところ、遠くから生まれたばかりの白い子馬を抱きかかえてくるスーフの姿がありました。そして、一人ぼっちで倒れていたその白い子馬を、スーフは育て始めるのです。
 スーフの一生懸命な世話のおかげで、馬は立派で美しく成長します。ある年、この国の王様が競馬大会を開催するといいます。そして、一等になった人と自分の娘を結婚させるというのです。スーフと白い馬は、その競馬大会に参加するのですが……。

 この民話は、「スーホの白い馬」として小学2年生の国語の教科書で採用されていることもあり、読んだことがある人も多いかも知れません。
 本書は絵本作家のいもとようこさんが文章と絵を描いており、スーフと白い馬が生き生きと表現されています。また、全編で漢字が使われておらずまだ就学していない子どもも読むことができるため、親子で物語を楽しむことができます。

 懐かしい気分に浸る人もいれば、哀しい物語に胸を熱くする人もいるでしょう。日本でも40年以上愛され続けてきたモンゴル民話に触れてみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)