「菌も人間も食べるものは同じ。水も必要。台ふきんはそれがワンセットになっている」と指摘する李憲俊所長

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梅雨といえば、気になるのが食中毒だ。できる限り食卓・キッチンを清潔に保とうと、今からこまめな掃除を心がける家庭も多いだろう。しかし掃除に使う「台ふきん」の清潔さには、どこまで気を配っているだろうか。

「毎日水洗いして、きちんと部屋干ししている」というかも知れないが、実はそれが危ない。菌やカビを調査研究する「衛生微生物研究センター」が2012年2月〜4月に調べたところ、なんと8割の家庭の台ふきんが10平方センチ当たり1000万個以上の雑菌で汚染されていた。これは「排水口並み」の汚さだ。

食卓をふけばふくほど雑菌が!?

調査によれば、13の一般家庭から回収した台ふきんのすべてから大量の雑菌が検出され、最も汚染されていたものでは10平方センチ当たり2.8億個にも及んだ。

ではどうしたらいいのか。同センターの李憲俊所長に対策を聞くことにした。そもそも、毎日水洗いもして清潔なはずのふきんがなぜ雑菌繁殖の温床となってしまうのか。

「台ふきんがふき取るのは純粋な水ではなく、台所や食卓などの『食材が溶け込んだ、あるいは浮かんでいる』水。洗い落としたつもりでも、菌にとっては十分な量の『栄養』が残る。濡れたままの台ふきんは菌にとって『栄養』と『水』がそろう理想的な、つまり我々には、非衛生的な環境といえる」

そんな台ふきんを使っていては、食卓やキッチンにも「汚染」が広がる。事実、同センターの調べではそうした台ふきんで水ぶきをした食卓の9割が「雑菌まみれ」の状態で、7割はふく前よりかえって雑菌が増えていた。「衛生学的・微生物学的には水ふきだけでは逆効果の可能性さえある」と李所長は警告する。

「雑菌が多いからといってすぐに危険があるわけではないが、問題はその中に大腸菌などの食中毒菌がいた場合だ。菌は増えれば増えるほどリスクが高くなるので、台ふきんがこうした状態では食中毒になる危険性を高めることになる」

2012年は「節電」で例年より室温が上昇することが予想される。温度が高まれば菌は増殖ペースを増すため、さらに状況は悪化する可能性が高い。

アルコール除菌剤を使うのも効果的だ

間もなく訪れる梅雨。食卓を清潔に保つにはどうすればいいのか。李所長は、3つの方法をアドバイスしてくれた。

(1)アルコール除菌剤を使う
(2)キッチンペーパーでふく。使い捨てなら雑菌が繁殖する心配もない
(3)台ふきんを使うなら、洗ったあと「レンジでチン」する。熱で殺菌できる上、乾燥も早まる。目安は「すぐには触れなくなるくらいの熱さ」

中でもアルコールによる除菌は、食事や料理の前と後、乾いたふきんなどに吹き付けて食卓・キッチンをふくのが衛生的、かつ簡単な方法だとして強く推奨する。

「アルコールは効き目が早く、市販のものでも濃度70〜80%の商品なら5〜10秒で菌を殺してしまう。しかも乾燥が早い。こうした『良い習慣』を身につけておけば、いざ食中毒菌が入ってきても防ぐことができる」

メーカーでもこうした需要を意識しており、たとえばジョンソン(横浜市)の「カビキラー 除菌@キッチン アルコール除菌」は食品に使える原料を100%使用するなど、食卓・キッチンでの利用を想定した商品となっている。節電が続く2012年は、「アルコール」が食中毒対策のカギになるかもしれない。