外国人から複雑と言われる日本語。自分を表す言葉だけでも数え切れない程あり、「I」「my」「me」と限られた言葉しかない英語と比較すると選択肢が豊富です。また、同音異義語の存在が理解を困難なものにします。さらに、和製英語の曖昧さが拍車をかけているといえるでしょう。

 例えば、日本ではナイーブという言葉がしばしば「繊細な」という意味に誤用されますが、「素朴な、愚かな」と原意に近い意味で使われることもあります。曖昧な日本語を含めすべてを理解することはそう簡単なことではありません。

 書籍『会社員とは何者か?』の著者・伊井直行氏も、「サラリーマン」という言葉に疑問を持っています。

 サラリーマンとは、一体だれのことを指すのでしょうか。

 コンサイス外来語辞典〔第4版〕で、「サラリーマン」の項を引いてみると、こう説明されています。「給料生活者、月給取り。事務系労働者。......(中略)......肉体労働者は、月給を取っていてもサラリーマンとはいわない」

 つまり、サラリーマンは、ホワイトカラーの別の言い方といえるのです。しかし、このコンサイス外来語辞典の解説は正しくないと、伊井氏は言います。その理由は二つ。

 「その一。給与所得者の一典型である公務員を『サラリーマン』とは呼びにくいこと。給与所得者のうち、会社に所属する者が『サラリーマン』であるらしい。

 そのニ。逆に、ホワイトカラーであろうとブルーカラーであろうと公務員であろうと、みな『サラリーマン』と呼ばれる場合があること。政府が就業構造に関する調査といった統計を発表した時、新聞やTVが、たとえば『就業者に占める雇用される者の比率が七割』を『働く人の内の七割がサラリーマン』と変換して伝えるようなことがあるのだ。つまり、会社や役所など組織に所属して給与を得ている人々は、職種にかかわらず、みな『サラリーマン』とも言えるのだ。『コンサイス外来語辞典』の『肉体労働者は、月給を取っていてもサラリーマンとはいわない』という定義と一致しない」(伊井氏)


 確かに言われてみると、サラリーマンほど曖昧な言葉ありません。ホワイトカラーの会社員を意味するのと同時に、給与所得者全員を指すこともあるのです。

 その時代にマッチするように言葉は変わっていくと言いますが、本来の意味と日常で使われる言葉が乖離し続けることに、私たちは少し危機感を持つ必要があるのかもしれません。外国人に言葉の意味を尋ねられた時に、間違った意味を教えてしまわぬように。





『会社員とは何者か? ─会社員小説をめぐって』
 著者:伊井 直行
 出版社:講談社
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