テレビ番組『情熱大陸』でとり上げられ、一般的にも知られるようになった「ノマドワーカー」。毎日決まった時間にオフィスに出社する会社員とは対照的に、特定の職場を持たず、ノートパソコン片手にカフェやファミレスを渡り歩いて仕事をする“ノマド=遊牧民”のような人々だ。

 メディアで「新しい働き方」と紹介されたこともあり、一見すると、自由を謳歌しているように思える。しかし、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク新書)の著者・速水健朗(はやみず・けんろう)氏は、「新しい働き方・生き方というものに惹きつけられる人の多くは社会の弱者」と、安易なノマド礼賛論に継承を鳴らす。

 速水氏によると、現在のノマドワーカーは「一部の富裕層」と「大多数の小口労働者」に二極化しているという。

「一方は、当然のごとくアップル社のPCを使い、渋谷区や港区のスタバでコーヒーを飲みながらクリエーティブな仕事に従事する年収600万円以上の“富裕層”。しかし、これはごく一部にすぎず、ボリューム層は、複数の肩書を名刺に印刷するITの“小口労働者”。ひとつの職種のみで食べていくのが困難な、IT業界の周りにできた“新貧困層”ともいえます。でも、その現実は、カフェというオシャレな働き場所のイメージに覆い隠されている」

 実際、ノマドが多く集う「コワーキングスペース」(電源とネット環境が完備された会員制の共有スペース)には、クリエーティブな仕事とは無縁の「IT小口労働者」があふれている。関東の某コワーキングスペース利用者(30代)がこう語る。

「『クリエーターのためのスペース』とうたっていたので、面白そうだから入ってみたけど、実際にいるのは黙々と事務作業をこなすIT労働者か、簡単なビジネス書や自己啓発本を読む、自称“起業家”ばかり。しかも、お金を払って入会したのに、なぜか友達みたいな扱いを受け、私が店番を頼まれることもしばしば。置いている雑誌も『MacPeople』とかで興味なし(苦笑)。やめようと思う」

 この男性が言うように、ノマドワーカーの中には「自己啓発本」や「ビジネス書」に耽溺している人も少なくない。さらに取材を進めると、彼らの多くが副業、もしくは本業で、マルチレベルマーケティング(マルチ商法)に従事していることも分かった。

「それを聞いて納得しました。ノマドワーカーの多くが『横のつながりでビジネスが生まれる』という趣旨のことを言いますが、これはマルチ商法の発想にリンクします。ノマドというスタイルそのものではなく、そこにハマる人たちのメンタリティが“マルチ的”とえるかもしれません」(前出・速水氏)

 もちろん、ノマドワーカーが皆、上記のような人たちばかりではない。実際に、精神的に充足しつつ、金銭面でも成功している人もいるだろう。だが、華やかなイメージばかりが先行しているのも事実だ。

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