「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (10) 「日本の投資信託に革命を!」 - 新プラン”直販投信会社”設立へ再挑戦を開始

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既存の金融業界の慣習とヒエラルキーの中では決して実現できないことを体験し、澤上さんの背中にインスパイアされて再び目覚めた長期投資への思い。

今度は自ら投資信託会社を創って、直販で資金を集めるプランでの再挑戦が始まりました。

とはいえ投資信託委託業はまだ金融庁の許認可ライセンスで、認可に至るまでのプロセスや提出書類の作成の仕方、あるいは組織の在り方などさっぱりわかりません。

無論本屋さんに行っても、投信会社の作り方のノウハウ本などもあるはずもなく、途方に暮れました。

すると澤上さんから「便利な男がいるから、彼に手伝ってもらえ」とある人を紹介されました。

その便利な人とは、ファンドコンサルティングパートナーズ代表の房前督明さん。

現在もセゾン投信アドバイザーとして私を支えてくださっている方です。

早速房前さんと、大手町のパレスホテルのロビーラウンジでお会いしました。

私のバックグラウンドと長期投資への渇望、そして「未来図」での体験を経て澤上さんから薫陶を受け今に至った経緯と、直販投資信託の実現に向けた構想をすべてお伝えしました。

ところが房前さんからは色よい反応が得られません。

実は房前さんは、大手証券出身でその後外資系投資信託会社でのさまざまな経験を経て独立された方で、その後数社の金融機関系投資信託会社設立をコンサルティングし、さわかみ投信設立の際も澤上さんの片腕として投信ライセンス許認可への作業に携わっていたのです。

房前さんは、独立系運用会社としてさわかみ投信が認可を得てさわかみファンドを設定するまでの道程がいかに茨(いばら)の道であったか、金融機関系列の投信会社許認可とは雲泥の差の高いハードルを実体験されたこと、そしてそれは既存金融業界に連綿と横たわる目に見えぬ参入障壁であり、直販でそのフィールドに挑むことの困難さを充分理解しているが故の、躊躇(ちゅうちょ)だったのです。

「悪いことは言わないからやめておいたほうがいいですよ」とおっしゃいます。

「直販は日本の個人マネーの流れを抜本的に変えるための最善の方法ではあるが、澤上さんも今に至るまで大変な苦労を重ねて、未だ結果が出せていない状態で、わざわざ大企業に職があるあなたたちがそんな無謀な挑戦をすることを心からはお勧めできない。

業界秩序に抗うということは、並大抵の覚悟じゃ続けられないですよ」と今度はこちらへの説得を始められたのです。

私も負けじと本気の決意を持って、「是非ともお力を貸していただきたい!」と食い下がっての応酬。

絶対あきらめないぞという気魄は伝えましたが、結局この日の初対面では応諾を得られなかったのです。

それでも翌日、房前さんはすぐに電話で返事をくださいました。

「一晩考えましたが、真剣な思いを理解しました。

こうなったら一緒に日本の投資信託に革命を起こしましょう!」とアドバイザーとして仲間に加わってくださったのです。

実に心強い味方が私にまたひとりできました。

今に至るまで、房前さんの存在は私にとってかけがえのない財産なのです。

房前さんの的確な指導で、直販投信会社創りが緒につきました。

投資顧問会社の同僚たちと役割分担し、認可取得に向けての作業が始まりました。

早速金融庁を訪問し、趣旨説明から入りました。

やはりさわかみ投信が許認可されていた実績はありがたく、当局にも検討の俎上に載せてもらえました。

それでも金融機関系列以外の独立系として、しかも直販モデルでの事業可能性を受け入れてもらうのはやっぱり大変でした。

セゾングループが持つ顧客基盤を前提としたストーリーで事業計画を構築して行くことで、どうやら当局の納得を得られるところまで進みました。

運用はこれまでの投資顧問事業で培って来たネットワークを活かして、海外の独立系運用者と複数交渉し、世界の成長を積極的に取り込んで行ける国際分散型のファンドオブファンズを前提に、着々と商品のカタチも準備が整って来ました。

これまでの仕事で長くお付き合いしていた人たちが、共感してスタッフに加わってくれました。

そして、あとは金融庁から認可申請書を提出してもいいですよ、といういわゆる仮認可を待つところまでたどりつきました。

気が付いたら、澤上さんに「お前も直販ファンドを作れ!」と言われてから2年近くが過ぎていました。

でも、もう一息です。

スタッフみんなで認可を得られる日を楽しみにワクワクと盛り上がっていましたが、間もなく訪れる試練を誰も予測することはできませんでした。