16日にスタートしたばかりの第65回カンヌ国際映画祭。だがすでに、マリオン・コティヤールという、アワードの有力候補が出ているようだ。


「開幕から日も浅いですが、『ラスト・アンド・ボーン/Rust and Bone(直訳:(金属などの)サビと骨)』は賞レースの本命となるでしょう。それにマリオンが最優秀女優賞を手にすることも十分ありえます」と、イギリス人の映画批評家ピーター・ブラッドショーは『The Guardian』紙で語っている。

フランスの国民的シャンソン歌手、エディット・ピアフを演じた伝記映画『エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜』で、アカデミー賞の主演女優賞を手にしたマリオン。今回の『ラスト・アンド・ボーン』では、アメリカの水族館"シーワールド"のような施設でシャチのトレーナーとして働くステファニーを演じている。彼女は結局、クジラの襲撃という不慮の事故で両脚を失ってしまうのだが、少々胡散臭い男アリ(マティアス・スーナールツ)との関係を通じ、新たな人生を歩んでいく。いや、少なくとも新たな人生を一緒に歩もうと"挑戦する"と言うべきか。

「これはほとんどの人があえて踏み込もうとしない、ダークな物語だ」と、<RopeOfSilicon.com>のブラッド・ブレヴェは言う。「アリはやがて、違法な監視カメラの設置という副業に手を染める。奴は自分の本業で"何でもあり"のボクシング・マッチで一旗揚げることができないからさ」。アリはまた、前出の通り、全く境遇の異なるステファニーと心を通わせていくことに。

『ラスト・アンド・ボーン/Rust and Bone』予告編(フランス語のみ)
フランス語の原題はDe rouille et d'os


監督は『リード・マイ・リップス』や『預言者』のジャック・オーディアール。映画はカナダ人作家、クレイグ・デイヴィッドソンの同名の短編集をもとにしているという。

『ラスト・アンド・ボーン』が自分には合わないと思っても、あまりがっかりしないでほしい。

「すべての人が『ラスト...』に共感できるというわけではないのですから」と、『Awards Daily』のサシャ・ストーンは<The Wrap>に語る。「ですが、映画を作る人ならば深く入り込んでしまうのではないでしょうか。それに、誰かを愛して失った人や、決して満たされることのなかった夢、そして遅かれ早かれ、(体を横たえて死ぬのか、立ち上がって戦うのかという)2つの選択肢に直面して見つかる瞬間といったものがあるのです」

『ラスト...』はすでに、カンヌ国際映画祭を含むフランス国内で公開中。さらにアメリカでも、ソニー・ピクチャーズ・クラシックスが映画の配給権を獲得し、今年中の公開を目指しているという。日本公開にも期待しよう。