「政治生命をかけて今国会で成立させる」と言い切った野田首相。消費税増税法案をめぐり、今、国会は揺れ動いている。

4月26日に無罪判決を受けた小沢一郎民主党元代表のグループは増税には大反対。与党の中でも賛否両論あるこの法案は、本当に成立するのだろうか? ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。

「野田総理は、消費税増税法案を通すためには自民党に協力を求めるしかありません。なぜなら、同じように消費税10%を言っているのが自民党であること。そして、ねじれている参院での採決には自民党の協力が必要であること。そのため、自民党の言うことは全部聞こうとするでしょう。これから審議されるのは政府案ですが、これには表向きは議論をやりますが、裏ではこっそり自民党案を入れ込んだ修正案を作っていると思います」

となると、このまますんなり消費税増税法案が成立し、野田政権が続くのか。鈴木氏は続ける。

「しかし、民主党と自民党が談合して消費税を成立させようとしている姿が少しでも見えれば、世論は反発します。すると、こうした隙をついて公明党と民主党の小沢グループが強硬姿勢に出てくるでしょう。総選挙必勝が命題の公明党は増税には賛成できません。場合によっては内閣不信任案を出すかもしれません。となると選挙協力関係にある自民党は公明党に追随するしかありません」

公明党が内閣不信任案を出せば、自民党は同調せざるを得なくなり、民主党から60人以上といわれる小沢グループが賛成すれば、野田政権は解散か総辞職するしかない。また、内閣不信任案の提出はなくとも、消費税増税法案が否決されれば、「成立に政治生命をかける」と言った野田首相は、総選挙で国民に信を問うことになる。

さらに自民党の谷垣総裁は「野田政権を解散に追い込むのが唯一の目標」と語り、都内で4月に行なわれた講演では「話し合い解散みたいなものがまったくないとは言えない」と言っているのだ。

つまり、ここまできたら、消費税増税法案が成立しようがしまいが“野田内閣の解散・総選挙”は既定路線だ。

では、解散・総選挙になると小沢グループはどう動くのか?

「消費税増税法案を軸に政界再編もあり得ます。そのときに小沢が前面に出てくると思います」と言うのは、ジャーナリストの田中良紹氏だ。

「野田政権も自民党も“社会保障と税の一体改革”と言っていますが本当でしょうか。赤字国債の補填に使われるのではないでしょうか。増税の難しさを誰よりもよく知っているのが小沢です。国の統治の仕組みを変えなければ、消費税を上げても将来の社会保障は行きづまります。だから増税よりもムダの削減と言っているのです。そして、それは大阪維新の会の橋下徹市長の主張とも重なります」

鈴木氏も小沢グループが新党を立ち上げるのは既定路線だと言う。

「なぜなら野田らの執行部と同じマニフェストでは戦えません。問題は、どこと連携するか。消費税増税反対や国の仕組みを変えるなどで維新の会、みんなの党が連携の最有力。そして、新党きづなも合流するでしょう。また、結成時期は解散直後です。早すぎると民主党に対立候補を立てられてしまいますから」

消費税増税法案をめぐり議論されている今の国会は、その後の解散・総選挙につながる国会であることはどうやら間違いない。もはや政治家の関心は、消費税増税法案の決着よりも、その先の解散総選挙に移っているようだ。

(取材・文/村上隆保)

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