「『インタビューが上手』なんて褒められたことも、最初の15年くらいは一度もありませんでした」と語る阿川氏

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『週刊文春』の対談の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」は20年目に突入し、『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)では、言いたいことばかり主張する議員や評論家を要所要所で見事にコントロールするこの人。そんな聞き手のプロであるアガワさんの、人から話を引き出す技術をまとめたのが『聞く力 心をひらく35のヒント』だ。

―本では、インタビューが苦手だったと強調されてますね。

 今も得意ではないんです。「インタビューが上手」なんて褒められたことも、最初の15年くらいは一度もありませんでしたし、聞き手の気持ちを害してしまったこともたくさん。鋭い質問もできません。でも、最低限、相手から「この人に語りたい。語って楽しかった」と思われるような聞き手になりたいと思ってやってきたんですよ。

―そうすると、どんな下準備をしてインタビューをするのかが気になります。本では、事前に質問の柱を3つ用意しておくとありました。

 昔は事前にシミュレーションして、質問を20個くらい書いて取材してました。でも、用意したことばかり聞いていくと、会話が流れていかなくてギクシャクしてしまう。以前、読んだ本の中に、「インタビューするときは、質問をひとつだけ用意しなさい。そうすれば次の質問をその場で考えなければならないから、その糸口をつかむために本気で相手の話に耳を傾けるようになる」って書いてあって。なるほどと思って、それで徐々に事前の質問項目を減らしていったんです。

―では、なぜ3つなんですか?

 さすがにひとつでは心配だから(笑)。事前に相手の資料や作品に目を通すと、その人の人生の転換期とか人間関係、考え方が見えてきて、「この時期のことを聞いたら面白いかな」とか、「いつも声が大きいのはなぜ」「育ててもらったおばあちゃんの影響が大きいのかな」というような、おおざっぱな疑問を抱きます。そこからテーマを絞ります。でも、実際に話を聞いて、おばあちゃんの影響は大きくないことがわかったら、そこで軌道修正する。あるいは、その人が話したいと思っていることがありそうだったら、そっちに話を向けてみる。

―その人が語りたいと思っていること、興味あることを探せと。

 事前に決めたことを全部聞かなきゃと思って、ひとりで焦ったり前のめりになってしまうのがよくないんです。女性を相手にしたときも同じでしょ。石田純一さんにモテの秘訣を伺ったとき教えてくれたのは、男の人は自慢話や自分の仕事の話をやたらとするけど、女のコにとっては別に面白くない。石田さんはそれよりも女のコの話を聞くんですって。女のコが「いま大学生なんだ」って言うと、「将来、何になりたいの?」。女のコが「将来、スタイリストになりたいんです」って言うと「どういうスタイリストになりたいの?」と質問を重ねていく。そこで、女のコが「実は、私」って言ったときに、「僕の知り合いにスタイリストがいるんだけど、彼女はこんなことがあって、誰それのスタイリストになったんだよ」なんて話をする。そのコにとって興味のある話だから、その話が1時間続いても女のコは飽きない。

―そのコにとって興味のある話が何かを探すわけですね。

 もちろん、インタビューではこちらが話しすぎてはいけないのだけど、相手から話を聞くことそのものは日常生活で誰でも行なっています。インタビューというと特殊技能みたいだけど、上司と意見を交わすのも、恋人の悩み事を聞くのだって同じこと。この本を読んだ人が、そのためのヒントを見つけてくれたらうれしいです。

●阿川佐和子(あがわ・さわこ)
1953年生まれ、東京都出身。81年、『朝のホットライン』で未経験ながらもリポーターになる。『週刊文春』の対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」は連載900回を超える。『ウメ子』(小学館文庫)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞を受賞。

『聞く力 心をひらく35のヒント』文春新書 840円
インタビューとは質疑応答であり、日常の言葉に直せば“会話”で、特殊技能ではない。初対面の人への近づき方、「オウム返し」の威力、慰めの言葉をかけるタイミングなどの技術を、豊富なエピソードとともにインタビューの妙手が明かす。

(撮影/高橋定敬)

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