芥川賞授賞式の"不機嫌ぶり"が話題となった田中慎弥氏。本人の意図するところではありませんでしたが、一躍時の人となり、受賞作『共喰い』は発売前に増刷決定。結果的に華々しいデビューとなりました。

 そんな田中氏の受賞後初の著作は、2008年から毎日新聞西部本社版に連載されていた短編小説を集めた『田中慎弥の掌劇場』です。

 タイトルにある「掌劇場」の「掌」という言葉には、愛読していた作家、川端康成の『掌の小説』へのオマージュがあるそうです。川端の書いていたものも短編小説集で、田中氏のものも同じ。今回の作品集は「1篇が1600字」、つまり原稿用紙4枚ほどの長さですから、短編の中でも短い部類に入るでしょう。

 自分の妻を殺したという男の話(『自供』)、不審なアタッシェケースを女性から渡された男の話(『リレー』)、地獄に行きたがっている男の話(『後悔』)など、各3ページほどの作品が37篇味わえます。

 『感謝』という作品は、震災後の小説家が主人公。当然、作者自身なのでは? という興味がわく作品で、こんな言葉が書かれています。

 「俺は小説を書くこと以外にやりたいことなんてないんだよ。役に立たないものを書くことに命を懸けてる」

 この力強い発言は授賞式での田中氏を彷彿させます。また、その後に続く、登場人物たちの口から飛び出すひにくな言葉のやりとりも、まさに田中ワールド。数ある"らしい"表現のなかでも、上記は非常に印象的な一篇として、存在感をしめしています。



『田中慎弥の掌劇場』
 著者:田中 慎弥
 出版社:毎日新聞社
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