球団初の黒字も
埼玉西武ライオンズが2012年3月期決算で、1億円の利益を計上した。親会社の西武ホールディングスからの広告費が加味されたうえで、赤字補てんを受けなかったのは、球団史上初。
ライオンズは2008年から球団名に埼玉を冠するなど、地域密着に注力。12球団で唯一、4年続けて観客数を伸ばしている。昨年はシーズン終盤までクライマックス・シリーズ進出を争う展開が動員に結び付き、72試合の主催試合には159万1,651人が来場した。
球団の居郷肇社長は、「今後も継続的な成長を目指しつつ、強いチームをつくることが必要」と話した
チームは現在、最下位に低迷しているが、久々に嬉しいニュースだ。思えばライオンズは西鉄ライオンズ時代から赤字続きで、その立場は不安定だった。
西日本鉄道は1972年、九州地方の炭鉱産業の衰退、自動車の普及で球団を手放さざるを得なくなった。ロッテオリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズ)の中村長芳オーナーが球団を買い取り、商号を福岡野球株式会社、球団名を太平洋クラブライオンズ、クラウンライターライオンズに変更しても、スポンサーからの収入が見込めないなど、球団の経営基盤は安定しなかった。
1979年に西武ライオンズになってからは、西武グループの支援で一時の安定を得たが、2005年にグループのオーナーである堤義明氏が証券取引法違反で逮捕されると、球団売却に関する噂がまことしやかに流れた。
西武グループは球団を復興のシンボルとし、球団売却を否定したが、2007年にアマチュア選手に裏金を供与していた事実が発覚。ただでさえ赤字の子会社の不祥事に、またしても球団売却の噂が再燃した。
そんな経緯があるだけに、今回の黒字はグループに球団の存在感を訴えている。今後も収益を挙げ続ければ、球団の立場はいっそう安定するだろう。
一方で気にかかるのが、今回の黒字には親会社からの広告宣伝費が加味されていることだ。
たしかに、広告宣伝費と赤字補てんは異なる。広告宣伝費は、シーズン開幕前から金額が決まっている。球団はその範囲でやりくりしなくてはならない。無計画に赤字を垂れ流し、その補填に、親会社に頭を下げるのとは異なる。
だが、それでも親会社から支援を受けていることには変わらない。本拠地の西武ドームには、西武グループの大きな看板が設置されている。これを見る限り、親会社からの広告宣伝費も決して少なくないのだろう。
親会社からの広告宣伝費は言わば、グループ内取引だが、これに西武グループはいったいどんなメリットがあるのだろうか。
実際、西武グループは都内西部と埼玉県所沢市周辺を主な営業地域としており、球団を通じ全国に広告宣伝するメリットは小さい。2012年3月期決算でも、164億円の営業利益のうち、2/3にあたる109億円が都市交通・沿線事業だった。
企業が球団経営の乗り出すメリットの1つに、親会社の広告宣伝がある。最近では福岡ソフトバンクホークスのソフトバンク、東北楽天ゴールデンイーグルスの楽天、横浜DeNaベイスターズのDeNAが球団経営に乗り出すことで、知名度が向上した。
だが、全国展開する彼らに対し、西武ホールディングスの営業地域は都内西部と埼玉県の一部が中心。彼らほど、全国規模の広告宣伝のメリットは期待できない。
プロ野球では12球団創設時、7球団で親会社が鉄道会社だった。これはテレビがまだ普及していない時代で、鉄道事業との相乗効果を目的に球団経営に乗り出した。
西武グループもそんな1社だが、時代は変わり、今では以前のような鉄道事業と球団運営の相乗効果は見込めなくなっている。
全国規模の広告宣伝に大きなメリットが見込めず、鉄道事業との相乗効果もかつてに比べ小さくなっているのだから、グループの事業収益が悪化すれば球団への広告宣伝費は削られる。
西武グループも2012年3月の営業利益は164億円で、前年度から20%減益した。これは東日本大震災の影響だが、ホテル・レジャー事業で8億円、建設事業で7億円、ハワイ事業で10億円の営業赤字を計上している。主力の都市交通・沿線事業も、震災の影響で定期旅客・定期外旅客が厳しく、減収減益になった。
今後もこのようなことが続けば、球団を通じた広告宣伝費にメスが入る可能性がある。球団は再び赤字に転落し、その立場も危うくなる。
ライオンズがその存在感をいっそう強固なものにするには、グループ外から収益を稼ぐしかない
ライオンズは2008年から球団名に埼玉を冠するなど、地域密着に注力。12球団で唯一、4年続けて観客数を伸ばしている。昨年はシーズン終盤までクライマックス・シリーズ進出を争う展開が動員に結び付き、72試合の主催試合には159万1,651人が来場した。
球団の居郷肇社長は、「今後も継続的な成長を目指しつつ、強いチームをつくることが必要」と話した
西日本鉄道は1972年、九州地方の炭鉱産業の衰退、自動車の普及で球団を手放さざるを得なくなった。ロッテオリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズ)の中村長芳オーナーが球団を買い取り、商号を福岡野球株式会社、球団名を太平洋クラブライオンズ、クラウンライターライオンズに変更しても、スポンサーからの収入が見込めないなど、球団の経営基盤は安定しなかった。
1979年に西武ライオンズになってからは、西武グループの支援で一時の安定を得たが、2005年にグループのオーナーである堤義明氏が証券取引法違反で逮捕されると、球団売却に関する噂がまことしやかに流れた。
西武グループは球団を復興のシンボルとし、球団売却を否定したが、2007年にアマチュア選手に裏金を供与していた事実が発覚。ただでさえ赤字の子会社の不祥事に、またしても球団売却の噂が再燃した。
そんな経緯があるだけに、今回の黒字はグループに球団の存在感を訴えている。今後も収益を挙げ続ければ、球団の立場はいっそう安定するだろう。
一方で気にかかるのが、今回の黒字には親会社からの広告宣伝費が加味されていることだ。
たしかに、広告宣伝費と赤字補てんは異なる。広告宣伝費は、シーズン開幕前から金額が決まっている。球団はその範囲でやりくりしなくてはならない。無計画に赤字を垂れ流し、その補填に、親会社に頭を下げるのとは異なる。
だが、それでも親会社から支援を受けていることには変わらない。本拠地の西武ドームには、西武グループの大きな看板が設置されている。これを見る限り、親会社からの広告宣伝費も決して少なくないのだろう。
親会社からの広告宣伝費は言わば、グループ内取引だが、これに西武グループはいったいどんなメリットがあるのだろうか。
実際、西武グループは都内西部と埼玉県所沢市周辺を主な営業地域としており、球団を通じ全国に広告宣伝するメリットは小さい。2012年3月期決算でも、164億円の営業利益のうち、2/3にあたる109億円が都市交通・沿線事業だった。
企業が球団経営の乗り出すメリットの1つに、親会社の広告宣伝がある。最近では福岡ソフトバンクホークスのソフトバンク、東北楽天ゴールデンイーグルスの楽天、横浜DeNaベイスターズのDeNAが球団経営に乗り出すことで、知名度が向上した。
だが、全国展開する彼らに対し、西武ホールディングスの営業地域は都内西部と埼玉県の一部が中心。彼らほど、全国規模の広告宣伝のメリットは期待できない。
プロ野球では12球団創設時、7球団で親会社が鉄道会社だった。これはテレビがまだ普及していない時代で、鉄道事業との相乗効果を目的に球団経営に乗り出した。
西武グループもそんな1社だが、時代は変わり、今では以前のような鉄道事業と球団運営の相乗効果は見込めなくなっている。
全国規模の広告宣伝に大きなメリットが見込めず、鉄道事業との相乗効果もかつてに比べ小さくなっているのだから、グループの事業収益が悪化すれば球団への広告宣伝費は削られる。
西武グループも2012年3月の営業利益は164億円で、前年度から20%減益した。これは東日本大震災の影響だが、ホテル・レジャー事業で8億円、建設事業で7億円、ハワイ事業で10億円の営業赤字を計上している。主力の都市交通・沿線事業も、震災の影響で定期旅客・定期外旅客が厳しく、減収減益になった。
今後もこのようなことが続けば、球団を通じた広告宣伝費にメスが入る可能性がある。球団は再び赤字に転落し、その立場も危うくなる。
ライオンズがその存在感をいっそう強固なものにするには、グループ外から収益を稼ぐしかない
バックスクリーンの下で 〜For All of Baseball Supporters〜
野球は目の前のグラウンドの上だけの戦いではない。今も昔も、グラウンド内外で繰り広げられてきた。そんな野球を、ひもとく