「間が抜けていて、真剣にやっている割には儲けが少なく、お人好し」そんな空き巣っているのでしょうか。

 伊坂幸太郎の作品『ポテチ』に登場する今村がまさにそう。仕事中(空き巣中)にもかかわらず、ソファにもたれ、どこから持ってきたかわからない漫画本を読む。聞けば、全部読むつもりだったそう。

 今回の仕事は、あるプロ野球選手の家。今村が読んでいた本は、双子の兄弟と幼馴染みとの恋愛を描いた高校野球の漫画。そう、あの有名な作品なのですが、今村ははじめて読むらしく、一緒に空き巣に入った大西が「その双子の弟、そのうち、事故で死ぬから」「で、お兄ちゃんがかわりに甲子園を目指すよ」と、わざとあらすじを言ったところで、こんなに元気なのに死ぬわけがないと、のんきにページをめくるのです。

 そもそも一緒に空き巣に入っている大西との出会いも気が抜けたもの。いつものように今村が空き巣に入っていると、自殺をほのめかす女性の声が留守電に入る。大西です。関わらなくても良い他人の電話ですが、今村は電話をかけなおし、今まさに飛び降り自殺をしようとしている大西のもとにかけつけようとするのです。「キリンに乗っていくから、場所を教えて」と。そんな適当なやりとりから大西は自殺を思いとどまり、今村と同棲をはじめるように。

 空き巣を生業とするマイペースな凡人・今村。『ポテチ』は、そんな今村とプロ野球選手・尾崎との不思議な運命を描いた人間ドラマ。同じ仙台の街で育ち、同じ誕生日の2人は、対照的な人生を歩んできたにもかかわらず、目に見えない強い絆で結ばれていたのです。

 同作品は、濱田岳が今村役を演じて映画化に。現在仙台で先行公開中。5月12日(土)からは全国で順次公開されます。仙台の"旨み"を68分にギュッと詰め込んだ胸を打つ感動作です。


 ※『ポテチ』は伊坂幸太郎の書籍『フィッシュストーリー』に収録されています。



『フィッシュストーリー (新潮文庫)』
 著者:伊坂 幸太郎
 出版社:新潮社
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