にわかスマホユーザーのありえない「苦情」が急増中

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多機能化が進むスマートフォン。買ってはみたものの、勝手に通信するし、アプリもたくさんありすぎて、使いこなせない。そんな状況になったとき、誰に文句を言ったらいいのか。いや、使いこなせないことに対して、誰かに文句を言うこと自体、筋が通っていないような気がする。しかし、ここでは百歩ゆずって、誰かに文句を言ってもいいということにしてみる。

もし、販売店の店員による巧みな営業トークに乗っかって、思わずスマホを買ってしまったというのなら、その販売店や店員に文句を言えばいい。それで物足りなければ、スマホのメーカーに文句を言うのもいい。だが、役所に文句を言うのは、どうなのであろう。2012年5月9日に掲載された神戸新聞の「スマホ、使いこなせない… 消費者窓口で相談急増」という記事によると、スマホについて「兵庫県内の相談窓口への苦情件数」が増えているらしい。

「普及に伴って買い換えたが、使いこなせないケースが目立」ち、相談内容でもっとも多いのが店員の説明不足。以下、「インターネットを利用していないのにデータ通信料が毎月かかる」「度々、操作ができなくなる」「電池が1日もたない」などが相談内容としてあげられている。

似たようなことは、東京都でもあった。スマホに関する苦情の受けつけが増えた東京都は、昨年8月に「消費生活アドバイス」として、主な相談内容と相談に対する助言を公表した。こちらもやはり、「通信料」や「電池」などが問題となっている。

苦情に対する助言の内容は、まるで小学生に言い聞かせるようなものである。兵庫県では、店員に「高速通信について、用途によって必要性の有無をよく聞くよう」にすることや、「基本ソフトやアプリケーションソフトには自動通信するものが多く、気づかない間に通信料が必要となること」などを説明。そして、「全ての人にスマートフォンが適しているとは限らない。商品特性と用途をよく考えてほしい」というコメントで締めている。

東京都の助言は、「適正な料金プランを設定しましょう」「電池切れに注意しましょう」「通信方法をよく考えて選びましょう」などなど。このように、兵庫県や東京都が助言している内容は、どれもスマホを買うときに熟考すべき基本的な内容である。それを熟考しなかったがゆえに「使いこなせい」とだだをこね、自らが招いたトラブルによって生まれた怒りを「苦情」と称し、その矛先を役所に向けて、いったいどうなるというのであろう。

よくわからないのに、買ってしまったことにより、スマホを使いこなせない。そのことに対する怒りの矛先は、まず購入した自分に向けなければならない。スマホが身の丈にあったツールなのかどうかを判断するのは、購入する自分なのだから。次いで、販売店やメーカーにその矛先を向ければいい。役所は税金によって運営されていることを考えると、職員と消費者がスマホに関してこのような小学生レベルのやりとりをしているのは、どう見ても税金の無駄づかいだと思う。

もちろん、スマホが爆発したとか、通常通りに使っているのに故障しがちだという場合は、その他の商品と同様に、役所の消費生活担当に苦情を言ってもいいと思う。だが、いま紹介した「苦情」と「助言」を見る限り、スマホに関しては、それらの多くが小学生レベルのものであり、役所に苦情を訴えるのはお門違いだと思わざるをえない。

(谷川 茂)