陜西省西安市郊外の西窯頭村にあるパルプ工場で1日未明、建物内部で轟音(ごうおん)が響き、窓から炎が噴き出した。同時に、窓から緑色の液体が飛び散り、周囲に降り注いだ。その後、事故で飛び散った液体のかかった木の葉が変色して枯れるなどで、周辺住民は不安をつのらせた。中国新聞社が報じた。

 工場建物のわきには、貨物輸送用の線路が設けられている。線路敷地の幅は十数メートルで、その外側は敷地境界のフェンスと立ち木がある。

 事故当時の1日午前1時ごろに敷地外側の道路を歩いていた男性によると、3階建ての工場内で突然「ドン!」という轟音が響いた。同時に工場の窓から炎の柱と煙が吹き出した。工場窓からはさらに、正体が分からない液体が勢いよく飛び散った。

 男性の周囲にも大量の液体が降り注いだ。口を押さえて急いで家に帰ったが、衣服がずぶぬれになっていたという。

 数日後、液体を浴びた立ち木の葉が変色し、枯れはじめた。そのため、事故で有害物質がまき散らされたのではないかとのうわさが出はじめた。

 周辺住民は以前から、同工場による汚染を心配していた。よくわからない臭いのガスが流れてきて、頭痛を訴える人が出ることもある。自宅の屋上からたまたま工場内を見たところ「ガスマスクのようなものをつけた人が働いていた」と、不安をつのらせる人もいる。

 事故が起きた工場は、西窯頭村の工業団地内にある。工場団地側は事故発生を受け、住民代表との話し合いの場を設けた。パルプ工場の環境汚染を以前から恐れていた女性住民のひとりは突然、土下座をして「とにかく、操業を停止してください。操業再開は、検査の結果、基準を満たしているとの結果が出てからにしてください」と訴えた。

 工場団地責任者は周囲にいたスタッフとともに土下座した女性を抱き起こしてから、説明しはじめた。まず、事故を起こした作業場は閉鎖しており、損害を受けた住民への補償を目的に村との協議を始めたと告げた。

 工場がまきちらした緑色の液体については、「硫化ニッケルが含まれているため色がついているが、人体には無害」と説明。木の葉が変色して枯れたことについては「高温の液体が木の葉にかかったため、枯れたと考えられる」と述べた。ただし詳しい原因はまだわかっておらず、当局が調査チームを編成したという。

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◆解説◆ 硫酸ニッケルは無水状態では薄い緑黄色の結晶だが、水分を含むと青緑色になる。日本の中央労働災害防止協会によると、吸入するとアレルギーや喘息(ぜんそく)、呼吸困難を起こす恐れがある。皮膚に触れた場合にはアレルギー性皮膚反応を起こすおそれがある。発癌(がん)の恐れもある。(編集担当:如月隼人)