女性はお茶を出さない。興味深いインドの文化

海外駐在員ライフ Vol.146

From India

インドのオフィスでは、女性がお茶出しをしない?


■テーブルを囲むのは仲間同士のみ

こんにちは。微美安です。今回は、インドの文化についてお話しします。

インドのオフィスで特に重要なのは、社内のインド人とのコミュニケーション。職場でも家庭的な関係を大事にするインド人だけに、まめに声をかけたり、一緒に食事したり、誕生日を一緒に祝ったりといった、ウェットなコミュニケーションが欠かせません。例えば現地スタッフの誰かが誕生日のときは、本人が昼食時の休憩中にケーキを買ってきて、オフィスでみんなで食べながら祝いますし、子どもが生まれたスタッフなどは、皆を家に呼んで食事をふるまったりします。オフィスのインド人スタッフが苦労の末、MBAを取得した際は、皆に「ついに合格したので、今日はランチをご馳走(ちそう)させてほしい」と呼びかけて、事務所のみんなに祝ってもらっていました。

ただし、テーブルを囲むのはあくまでも「仲間同士」のみ。上司と部下なら「同じオフィスで働く仲間」ですが、運転手や「ピーオン」(オフィスで庶務全般を担当する男性の専門職)は、一般的に私たちホワイトカラーと同じテーブルにつくことはありません。彼らは彼らで「運転手仲間」「ピーオン仲間」「清掃スタッフ仲間」といったコミュニティがあるわけです。憲法で禁止はされてはいますが、やはり日々の生活に、「カースト(コミュニティ)」という概念は残っているようです。

なお、オフィスでお茶を出すのは、コピー取りや郵便、ランチ(弁当を持参するスタッフが多い)の準備などと同様に、庶務職であるピーオンが行います。したがって、インドのオフィスでは、基本的に女性はお茶を出しません。オフィスだけでなくレストランなどでも、給仕を行うのは男性とされています。女性が行うのはテーブルへのエスコートまでです。

食事の時間が長くて遅いのも特徴的。ディナーも、21時過ぎにスタート、23時過ぎでもまだ終わらず、子どもがレストランでうろうろしている姿をよく見かけます。実際には、ディナーの前からチキンティッカ(一口サイズのチキン)などをつまみに、食前酒としてスコッチウィスキーのソーダ割などのお酒を飲んでから食事をする人も多く、食事にかかる時間はさらに長いことになります。さらに、オイリーな料理が多いために太りやすいのか、インドでは、スイカが入ったようなお腹をしている方が非常に多いですね。肥満大国のため、体重80キログラム超の私が、この国ではスリムに見えるほどです。


■古代と現代が同居するインドの道路

インドでは、人々が自然と共生していることもあらゆる場面で痛感します。それは、牛や羊が悠々と闊歩(かっぽ)する横を、水牛の馬車が走り、そのすぐ近くを自転車やバイク、さらにはバスや高級車が走り抜けていく光景を見れば一目瞭然。古代と現代が同居しているのがインドなのです。

リサイクルも徹底していて、生活で出たゴミは、燃やす前に徹底的に中身をばらばらにされて、まだ使えるものは再利用、修理できるものは修理を施します。人間が作り出したものはなるべく自然に返すというのが基本的な考え方のようで、男性が路上で用を足すのも、ゴミをどこにでも捨てるのも、その一環なのかもしれません。

ヒンディー語で「非暴力」という意味の「アヒンサー」の精神も社会全体に浸透しています。舌鋒(ぜっぽう)鋭いインド人ですが、どんなに怒っても決して手は出しません。暴力をふるうことに対して非常に違和感のある社会なのです。そのためか、今でも主張が通るまで飲食を断つハンガーストライキが一定の影響力を持っています。「非暴力主義」は、インドの政治指導者だった故マハトマ・ガンディーだけでなく、インドの社会全体のコンセンサスともいえるでしょう。

次回は、インドでの暮らしについてお話しします。