刺青を入れたフットボール選手と言えば、元イングランド代表のデビッド・ベッカム選手や元日本代表選手の瑠偉ラモス氏が良く知られた存在ですが、ここヴェルダー・ブレーメンで日本人の鍼灸トレーナーを紹介するプロジェクトを立ち上げてからというもの、多くのブンデスリーガの選手が刺青を入れていることに気付かされるのであります。それは当たり前のことですが、治療室やロッカールームでは多くの選手が上半身裸や全裸でタオルを腰に巻いただけの格好で歩き回っているからです。そんな彼らの約四分の一は何かしら刺青を入れた選手達で占められています。

人類の歴史と刺青の関係は古く、それを手繰れば恐らく一冊の本が書けてしまうでしょうし、実際、刺青に関する書物や文献は沢山出回っていますが、刺青の用途は個体識別、刑罰、ファッションから性的装飾に至るまで多様です。また、古今東西を問わず戦地に赴く戦士やボクサー、プロレスラーと言った格闘家に刺青を入れる傾向が見られるのは、動かし難い事実のようです。
日本でも人気の高いK−1やムエタイの選手の多くが刺青をしていますし、パプア・ニューギニアでは伝統的に先頭に赴く成人男子が一様に刺青を入れているのはその証と言えるでしょう。かつて読んだ第2次大戦下の泰緬鉄道(ハリウッド映画の「戦上にかける橋」のモデルとなったことで有名なタイとビルマを結ぶ鉄道。日本軍が地元民や米英蘭軍の捕虜を動員して建設した)建設に従事した元日本軍兵士の手記に、英国や米国人捕虜の多くが刺青を入れていることに驚く様子が描かれているのですが、その戦記も兵士(戦士)と刺青の深い関係を証明する文献の一つと言えるでしょう。思えばフットボール選手もピッチ上で過酷な戦いを強いられる側面を併せ持つ人種であり、その観点からすればフットボール選手に刺青をした選手が少なくないのは、納得の行く現象ということになります。勿論、ファッションとして刺青を入れている選手も多いのでしょうが、私は彼らがピッチで戦う男として刺青を求めている側面を私個人は感じています。

しかし、この刺青を入れると言う現象は、ブレーメンのコーチで現役時代はHSVの一員として欧州チャンピオンズカップで優勝し、トヨタカップでも来日経験のあるロルフ氏の弁によると、1990年代に入ってからのことで、本人が現役時代の頃は皆無であったそうです。また同氏は、近年の刺青をしたフットボール選手の傾向を一種のファッション、またブームとらえているようで、彼に言わせれば戦う男の心理状況が影響を及ぼしていると言う私の説は怪しいと言うことになります。

確かにJリーガーで刺青をしている選手は殆ど見かけませんが、日本の場合は伝統的に刑罰や悪い意味での個体識別に用いられていた歴史がありますし、任侠の世界と切っても切れない関係があることなど、特殊であるととらえるべきでしょう。

なお、ブレーメンにあっては極めて温厚な紳士であるファンダー選手によれば、やはりフットボール選手達の刺青はファッションであり、耳や鼻のピアスをする延長線上のものであるとらえているようです。「ピアスやちょっとした小さな刺青なら構わないけれど、上半身全体に入れてしまったりしたら、後々消すわけにもいかないし、後悔するんじゃないのかな」と、語っていました。

ともあれ、その起源や刺青を入れようとする人々の精神構造を分析することは、文化人類学者の皆様にお任せするとして、今回はドイツ・ブンデスリーガのヴェルダー・ブレーメンという限られたクラブではありますが、そこのどんな選手がどのような刺青をしているのかをざっくばらんに御紹介することで、皆様がフットボール選手の人となりを少しでも知る機会となれば幸いです。