書店とトイレ

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書店に入る。まず、平積みになった本を見る。次に、書棚にならぶ本をながめる。気になる本を手に取る。目次をさらっと見て、「まえがき」を斜め読み。面白そうなら「あとがき」も読んでみる。

新刊コーナーから始め、ノンフィクション、現代思想、哲学、サブカル、新書、そして文庫コーナーに至るまで、同じようなことをしながら店内をまわる。そして、そんなことをやっていると、かなりの確率でトイレにいきたくなる。それも「小」ではなく「大」だ。

あまりにもその確率が高いので、定かな理由はないものの「書店で本を見たり読んだりしていると、人は便意をもよおすものなのかもしれない」などとアホな妄想をすることが度々あった。

東京新聞の記事を読んで、「ほう、やはりそうだったのか」と自らの妄想を肯定されたような気がして、ちょっと嬉しかった。2012年4月29日付の「書店にいると便意を催す 伝説の症状裏付け?」という記事がそれだ。

「出版業界団体でつくる日本出版インフラセンターがまとめた調査で、トイレの利用を望む声が予想以上に多い」ことが分かったのだと言う。同センターが約1000人のネットユーザーに対しておこなった調査で、「今後書店で利用したいサービス」を複数回答でたずねたところ、もっとも多い回答が「ポイントカード」、次が「バーゲン」、そして第3位に「トイレの利用」が入ったのである。

記事によると、この書店と便意の関係は、1985年に雑誌「本の雑誌」(本の雑誌社)の特集でかなり話題になったのだとか。それも、同誌への投書がきっかけであり、その現象が「投書をした人物の名前を取って『青木まり子現象』」などと呼ばれていたと言う。筆者は知らなかった。

書店でトイレに行きたくなる人が多いことは、深い理由はよくわからないものの、なんとなく実証されつつあるようだ。次なる問題は、トイレに行きたくなっても書店にトイレがない場合が多々あるということになる。

東京在住の筆者は、三省堂書店やジュンク堂書店、紀伊國屋書店、リブロ、ブックファーストなど、どれも本店レベルの大型書店に行くことが多い。これらの書店にはトイレがあるので安心して本を選ぶことができる。だが、中規模から小規模の書店にはトイレがない場合が多い。

記事では、書店にトイレが少ない理由として「万引対策や店舗スペースの問題」などを紹介している。たしかに小さな店でトイレを設置するのには無理があるとは思う。とはいえ、最近はトイレの利用が可能なコンビニも増えていることから、トイレの設置と集客の因果関係はそれなりにあるのだとも思う。

あまり無責任なことは言えないが、「青木まり子現象」の存在が明らかになりつつある(?)今、トイレと集客の関係にも期待しつつ、トイレを設置してくれる書店が増えてくれると、さまざまな意味で助かる読者も多いのではないか。

(谷川 茂)