元WBCバンタム王者の辰吉丈一郎(41)は、現役続行中。そんな辰吉に「男の引き際」を聞いてみました。

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 なんじゃそれ。何でそんなこと訊くんよ。辞める気さらさらないんやからコメントに困るわ。

 ぼくは、もう一度世界王者になる。それは目標とかってレベルじゃないですよ。目標っていうと、そこを目指しているってだけの話。違うよ。絶対(ベルト)取る。

 大体、今まで引退を考えたことはないんです。考えてるんやったら、もう辞めてますよ。人間ってそういうもんじゃないですか。こっちを食べたい、あれを買いたいって迷っても、本能では答えはわかってる。迷った時点で自分の選択肢を薄々感じてるもんでしょう。

 だから『第二の人生はどうしますか』なんて質問をよくされるけど、それを考えてたらもうやってますよって答えてます。まったく考えてないからボクシングやってるんちゃいますか。

 なんで皆、第二の人生なんて考えるんやろうね。今やってることに集中してないんと違うんかな。

 誤解を招くかもしれないけど、ボクシングは趣味みたいなもんです。家族を養うためにやってるわけじゃない。自分が好きだから、やりたいからやる。変な話、趣味なら還暦までできるよね。もちろん好きといっても限界もあって、ボクシングの場合、体が動かなくなったらできない。

 でもぼくの場合、それは今じゃない。それを感じたらグローブを置くわ。

 そりゃ、40にもなれば、若い頃の身体とは勝手も変わってくるよ。若い頃は2時間練習すれば2キロぐらい落ちたけど、いまは同じ時間練習しても数百グラムしか減らない。でもそれを、僕は「老い」とは考えてへん。

 きつい練習に脳や身体が慣れてきてるんよ。全身の筋肉を使わなくても同じ動きができるようになった。それはむしろ成長といえると思う。

 楽しいですよ、ボクシング。ルールはとても簡単ですよね。へそから上、耳から前しか拳で打ってはだめ。なのに技術や駆け引き次第で弱いと思われてた者が勝ち、強そうな者が失神KOとかで負ける。だから深い。

 もちろん、現実的にぼくがリングにあがるのが難しいというのはわかってます。でも、だからこその挑戦。4度目のベルトは誰も取ったことない。ぼくは人が見たことがない景色が見たいんです。それは生きる衝動としてね。とにかく、早く試合がしたい。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号