投資家の株式運用に役立つ投資分析を提供

ビジネスパーソン研究FILE Vol.167

モルガン・スタンレー 吉田祐輔さん

業界・企業の動向を調査し、投資分析などを投資家に提供するリサーチ担当の吉田さん


■アナリストの下で調査・分析の視点を磨く

「リサーチの面白さは、自分なりの予想や見方を提示でき、それをお客さまに評価されること。提示した予想をお客さまがどのように評価されるのか? 実際に株価が動くとき、予想が当たるのか、外れるのか? 外れるとしんどいですが、予測通りに株価が動き、お客さまに評価していただけることが一番の醍醐味かなと思います」

株式市場や個別の業界・企業の動向を調査し、投資分析や市場動向に関する専門的な見解を機関投資家(※1)に提供するモルガン・スタンレーのリサーチ業務。リサーチ部門が提供した情報をもとに、営業担当が商品を提案したり、投資家が株式の売買を判断するため、自社の収益にも大きく影響する仕事だ。入社6年目を迎えた吉田さんは、機関投資家に有益な情報提供ができるアナリストを目指して日々業務にまい進している。

(※1)機関投資家:個人ではなく、組織や団体として投資を行っている大口の投資家

リサーチ業務においては、一業界を一人ないしは数人のアナリストが担当し、業界内の数社〜数十社を調査対象企業に定めて、アナリストとリサーチ・アソシエイトが分担して継続的に調査を行う。入社後、研修を終えた吉田さんが配属されたのは、電子部品チーム。まずは上司であるアナリストのサポートに取り組みながら、リサーチ業務や調査の視点、電子部品業界について理解を深めた。
「データ入力や上司の代わりに関係部署とメールをやりとりするところから始め、徐々に上司が作成するプレゼン資料やレポートの一部分を任されたり、調査対象企業への取材に随行することや、新たな調査対象企業の調査を一から立ち上げる過程のサポートなども行うようになりました。仕事のコツが何となくつかめてきたのは1年が過ぎたころ。上司が使用する資料のため収集したデータや作成した図表に『いいね』と言ってもらえたり、資料作成をまるごと任されるようになりました」

大きな挑戦となったのは、入社3年目。新たな対象企業の調査の立ち上げを任されたのだ。立ち上げる際にまず行うことが、「調査開始レポート」の作成。対象企業のビジネスの成り立ちや利益構造、主力事業の伸びの予測、新しいビジネスの芽の有無など、投資判断に必要な情報を、取材などを通じて調べ、まとめるのだ。その後は、四半期に一度の決算時や事業に関する新たな動き・ニュースが生じるごとに情報を収集し、分析結果とそれに基づく株価の動向予測などを継続的に機関投資家に提供する。自ら調査を立ち上げるのは、吉田さんにとって初めての経験。苦労も多かったという。
「作成したレポートについて、アナリストからなかなかOKが出ませんでしたし、その後調査を継続するにあたっても、経験が浅いために決算発表の内容や日々発表される対象企業に関するニュースをどのように解釈すればよいか、なかなかわかりませんでした。例えば、お客さまから『この新規事業の競争力・将来性ってどうなの?』『この株価は、高いの?安いの?』といった質問を受けても、企業に足を運んで情報を得ることがまだ十分ではなかったため、他業界との比較や海外市場での立場、株式市場の参加者の平均的な考えなどがつかめておらず、説得力のある回答ができなかったのです」

失敗も経験した。「買い」だと予測した株式の株価がなかなか上がらなかったのだ。
「株価が下がることはなかったものの、上がらない期間が長く続いてしまったのです。業績予想自体は間違っていませんでしたが、その会社への株式市場の評価、すなわちどんな要因で株価が動くのかを読めておらず、株価の動きを的確に予測できませんでした」

そのような失敗も経験しながら、吉田さんはわからないことは調べ、投資家との議論を重ねる中で市場を読む視点を養っていった。
「お客さまから質問を受けたり、お客さまと議論をすることで、次第に必要とされている情報が徐々にわかってきて、打ち合わせの前に準備できる範囲も広がってきました。お客さまが必要とする情報をふまえたデータの解釈ができるようになってきたと実感しています」


■業界知識を深め、情報源を増やし、的確な投資判断を導くスキルを磨く

その後もアナリストをサポートしながら数社のリサーチを担当して経験を積んだが、電子部品業界の担当企業数も限られていたため、吉田さんはより多くの企業を担当したいという思いを抱くように。ほどなくして機械・資本財(機械部品、重工業など)業界を担当するポストへ5年目の11年7月に希望して異動。機械・部品メーカーなど8社を担当することに。これまでとは異なる業界であるため一からのスタートとなったが、蓄積した経験を生かして成果を出し始めている。
「ここ数カ月で出したレポートでは、ある程度予想どおりに株価が動くケースも出てきました。担当業界が変わって1年もたっていないため、今はまだお客さまを訪問する際も上司に同行することがほとんどですし、特定の企業の調査を立ち上げて調査開始レポートを書き、継続して調査を重ねる経験を積む段階。取材やデータ集めを丹念に行い、お客さまにとってわかりやすい形でレポートをまとめることを愚直にやることしかできませんが、予想通りに調査対象企業の事業が動き始め、株価もそれに準じて動いているのを見ると、よかったと思いますね」

「早く業界知識を深めて調査対象の企業を広げ、一人でお客さまを訪問できるだけの力をつけたい」と話す吉田さん。投資家から評価されるアナリストになるために、さらに努力を続けている。
「お客さまから評価していただけるアナリストになるには、いくつか必要なものがあります。1つ目はスピード。決算やそれに対する企業の見解などの情報が出れば、すぐにまとめてお客さまに報告することが求められます。2つ目は、ほかのアナリストにはない情報源から情報を得ること。3つ目は、ほかのアナリストにはない切り口で分析することです。1つ目と2つ目は今まさに心がけていることで、特に2つ目は、対象企業の海外の現地法人や現地の競合企業への取材を徐々に進め、同業他社のアナリストに必死に追いつこうとしています。さらに、これまでは、業界知識や情報源の広がりが十分ではなかったために中立的な投資判断が多くなっていましたが、2012年に入ってからは、徐々に積極的な判断を行うようにしています。まだまだ修業中ではありますが、これからより一層お客さまとお話しする機会を増やし、株式市場の参加者全体の見方を把握できるようにしていきたいですね。そして、将来は、アナリストとして1つの業界を見られるようになりたいと思います」