隠された歴史を掘り起こす研究者にエールを

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研究者の地道な努力によって、隠されていた歴史の一部が掘り起こされた。まずは、2012年4月22日に共同通信が配信した以下の記事を読んでいただきたい。


被爆者の赤ちゃん研究利用1200人、遺伝影響調査で米

広島と長崎への原爆投下の数年後に、被爆者の親から死産したり、生後すぐ亡くなったりした赤ちゃんのうち、臓器標本やカルテが米国に送られ放射線研究に利用された人数が1200人以上に上ることが21日、分かった。米国は戦後間もない時期から放射線による遺伝的影響の調査に着手。占領期に被爆者や新生児の標本が日本から米国に渡ったことは明らかになっていたが、具体的な規模は軍事情報とされ不明だった。

広島市立大広島平和研究所の高橋博子講師が米軍病理学研究所の内部文書で確認した。高橋講師は「核兵器や放射線研究のために、新生児がモルモット扱いされたと言える」と話している。


たとえば、第二次大戦中に日本軍は、戦時のどさくさにまぎれて人体実験を行っていたとされる。731部隊(関東軍防疫給水部本部)である。そして、同大戦の末期に2発の原爆を日本に落とした。当時は、核爆弾による被害、とくに放射能の人体に対する影響がよく分かっていなかった時期であった。よって、見方を変えれば、原爆の投下自体が壮大な人体実験であったとも言える。

これら日本と米国とがそれぞれ行った人体実験を、どっちのほうが悪いとか、どっちのほうが重大だと比較することには、あまり意味がない。いずれの人体実験も問題であり、それぞれの問題がなぜ起こったのかを検証し、同じようなことを繰り返さないようにする。それが「歴史から学ぶ」ということに他ならない。

どの国家も、都合の悪い歴史は隠蔽しようとする。ガードは固い。だが、研究者やジャーナリストらの努力や熱意により、ある国家の隠蔽された歴史を垣間見ることができる。731部隊に関する情報もそうであったし、被爆者の赤ちゃん1200体以上が米国の放射線研究に利用されていたという今回のおぞましい情報もそうであった。

こうした情報が隠蔽され続けた場合、歴史に埋もれてしまい、最終的には「なかったこと」にされてしまう。それは、貴重な「学び」の機会を失うことにつながる。そう考えると、とりわけ歴史の研究者とは、過去の出来事を調査・研究し、その成果を発表することにより、私たちに「学び」の機会を与えてくれる人たちだとも考えられる。研究する過去の出来事がポジティブなことであれ、ネガティブなことであれ……。

たしかに、研究者といってもいろんな人がいる。研究活動などはほとんどせず、無難に講義を行うだけで、大学から高給をもらっている人もいる。しかし、私たちが「学び」の機会を得るために、地道な努力を重ね、歴史を掘り起こす研究者もいる。その区別をしっかりした上で、後者のような研究者をきちんとバックアップするような体制を、国、大学、そして一般の人々が協力して作っていきたいものである。

今回、貴重な歴史の一部を明らかにした高橋さんの研究活動に、微力ながらエールを送りたい。

(谷川 茂)