再稼働の条件は原子力規制庁の設置と事故の究明

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「これだけは見過ごせない 原発再稼働の問題点とは」という特集記事が毎日新聞に掲載された(2012年4月24日付)。タイトルのとおり、現状で原発を再稼働することの問題点を、分かりやすくまとめた内容である。再稼働するためには最低限でもクリアすべきものは何か。この記事を読むと、それが見えてくる。


クリアすべきものの第1は、原子力規制庁の設置である。与党・民主党の原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)は、「再稼働にあたっての5条件を政府に突きつけた」。そのひとつが、原子力規制庁の発足である。環境庁の外局として、同庁は本年4月に設置される予定だった。


同PTの座長をつとめる荒井聡議員は、記事の中で「3・11後にずっと原発の安全性の議論をしてきて、日本の原子力政策は欠陥だらけと分かりました。その原因は、安全神話の中に身を置いた原子力ムラの一部の人たちだけで政策を主導してきたことです」とコメントしている。

この1年で、原子力をめぐる旧来の管理体制が機能不全に陥っていることや、信用のおけないものであることが周知の事実となった。これまでの組織と人材に任せてはおけない。国民の多くはそう感じていると思われる。そして、政府もそれは分かっているはずである。だからこそ、原子力をめぐる新たな管理体制の目玉として、原子力規制庁の設置を取り決めたのである。

つまり、原子力規制庁が設置されていない現状は、福島第1原発の事故をもたらした旧来の体制のままで原子力をめぐる政策が進められていることを意味する。同庁の設置の遅れについて、荒井議員は「原子力安全・保安院が経産省にあるうちに、再稼働の道をつけたいとの思惑がどこかにあるんじゃないかと勘繰りたくもなります」と語っている。そんな思惑で事を進めている政府が、事故からの学びや反省を活かせるのかと疑問に思う。

クリアすべきものの第2が、福島第1原発事故の原因を明らかにすることである。事故原因の究明には、政府の原発事故調査・検証委員会や国会の事故調査委員会が取り組んでいる。だが、いまだに結論は出ていない。もちろん、すこしずつ成果は上がっているものの、それはあくまでも暫定的なものだ。


広域に放射能が拡散してしまうような重大事故が起きた。再発を防止するためには、事故の原因を完全に究明する必要がある。言いかえれば、調査の結論が出るまでは、事故の原因が完全に分かっていないということになろう。事故が起きれば福島第1と同じような状況になる恐れのある原発を、事故の原因が分かっていないうちに再稼働する。それは、すなわち事故が再発しても対処できないことが分かっているのに、あえてそのリスクをおかすという政府の姿勢を示している

どうして事故が起きたのか。そのことが分からないうちに原発を再稼働させたら、同じような事故が起きても対処できないことくらい、小学生でも理解できると思う。乗っている自転車が故障したら、その原因を突きとめ、再び故障しないように対処する。自転車なら故障しても修理すれば対処できるが、原発が大規模に壊れた場合、修理にも対処にも想像を超える困難がつきまとうことは、福島第1原発のこの1年を見ていれば誰にでも分かる

順番から言うと、まず原発事故の原因を完全に究明することが必要であろう。そして、その結果を踏まえた上で、原子力規制庁を発足させる。これらは、原発再稼働の最低条件だと言える。同庁は、事故の原因を元に、再発を防止するための「規制」を設ける。その規制をクリアした原発については再稼働する。そんな仕組みにすれば、脱原発を考える国民も、原発の再稼働に理解を示すのではないか。

結局、いま私たちが注目すべきことは、「なぜ政府は原発の再稼働を急ぐのか」という点に集約される。おそらく、そこを見つめることによって、いままでの原子力行政の実像と、これからの原発の姿が浮かびあがってくるような気がする。

(谷川 茂)