右肘の腱移植手術からの復帰を目指す米ボストン・レッドソックス松坂大輔が現地時間22日、マイナーリーグの試合に登板した。

 傘下のセイラム・レッドソックスの一員として、対ウィルミントン・ブルーロックス戦に先発登板。昨年5月16日の対ボルティモア・オリオールズ戦以来、343日ぶりの公式戦マウンドは、4回57球6安打3失点だったが、松坂当人は「結果より内容。問題なく投げられた」と安堵の表情を浮かべた。

 マイナーリーグには、メジャー契約の選手が試合に出場した際、マイナー契約の選手に食事をご馳走するという暗黙の了解がある。これは、高額な年俸をもらっているメジャー選手が、低年俸のマイナー選手から、試合に出場するチャンスを奪った穴埋めだ。

 マイナー選手の給与水準はメジャー選手に比べて低く、トリプルAでも最低保障年俸は7万5,000ドルと言われている。これとは別に、遠征の際には1日20ドル程度のミールマネー(食事代)が支払われるのだが、下位リーグに行くほど、選手の生活は苦しい。
 このため、多くの選手はシーズンオフにアルバイトで別に収入を得ている。日々の食事もハンバーガー程度の安いもので、マイナーリーグは「ハンバーガー・リーグ」とも呼ばれている。

 そんなハンバーガー・リーグだからこそ、松坂のようなメジャー選手の出場はある意味で歓迎される。

 一方、マイナーリーグには審判が同僚にステーキをご馳走するステーキ・ディナーと呼ばれるという習慣もある。
 マイナーリーグで審判の経験がある平林岳審判員によると、ステーキ・ディナーが行われるのは、試合が2時間以内に終了したとき。わが国に比べ試合時間が短いとされるアメリカでも、2時間以内に試合が終わるのは稀。だからこそ、球審がスムーズに試合を進行したとして、塁審は球審にステーキをご馳走する。

 ほかにも、半イニングの攻撃が3球で終わったとき試合開始前に球審がマウンド周辺に転がしたボールが、マウンドの頂上にあるプレートの上にぴったり止まったときなども、ステーキが振舞われる。

 平林審判員も2005年、ルーキーリーグのガルフ・コーストリーグでステーキ・ディナーを経験している。
 1度目は、同僚の球審がマウンドのプレート上でボールを止めたとき。2度目は、球審だった平林審判員自身が試合を1時間39分で裁いたときだ。

 平林審判員は、「薄給の身で奢る出費は痛いが、奢る方も楽しいディナー・タイムを共有できるので、なかなかいい習慣だと思う」としている。

 試合時間が平気で3時間を超えることも珍しくないわが国では、審判はなかなかステーキにありつけない。

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