名指し批判が物議に

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京都府亀岡市の10人死傷事故を巡り、兵庫県豊岡市にある公立豊岡病院の但馬救命救急センターがブログで、家族らへの取材がひどかったと新聞社を名指し批判した。しかし、各新聞社では、批判内容は事実ではないなどと反論しており、同センターでも一部を修正した。

「ご家族,医療者,関係者の心情を考えられないくらいマスコミの人間の心は腐っているのでしょうか」

公立の病院側から、ここまでマスコミ批判がされるのは珍しい。

「取材拒否も、霊安室前で勝手に撮影」

ブログの記事は、事故が起きた当日の2012年4月23日夜にアップされた。タイトルは、「マスコミの人間に心はあるのか」だ。

それによると、但馬救命救急センターでは、医師を乗せたヘリも出動し、命を救おうと全力を尽くした。望まない終末になったとき、家族の心のケアも心がけたというが、マスコミがその努力を踏みにじったと明かした。

マスコミに対して、取材拒否の考えを再三伝えていたものの、各社の記者が、霊安室の前にカメラを構え,そこから帰ろうとする家族を勝手に撮影していたと糾弾したのだ。ブログでは特に、読売、毎日、朝日3新聞社の名前を挙げた。個人名を出してもよいとも付記したが、名前は記されていない。

続いて、「一番大切にしたい瞬間に,ズカズカと土足で割り込んできました」と強く非難した。ブログが多くの人に読まれることは知っているとして、「だからこそ敢えてここで述べます」と言っている。

このブログ内容について、ネット上では、賛同する声が多い。ブログのコメント欄にも、24日までに200件以上が書き込まれ、「世間の関心を惹くという効果もありますよ」とマスコミに理解を示す声もあるものの、「行き過ぎた報道の自由」「怒りを覚えました」などと批判が相次いだ。中には、記者の名前を晒すよう求める声もあった。

取材を拒否されていたとしたら、なぜ新聞社は取材を続行していたのか。

読売、毎日、朝日は、事実無根と反論

名指しされた3社のうち、朝日新聞社は、J-CASTニュースの取材に対し、ブログには事実誤認があり、霊安室前の現場には記者がいなかったと反論した。

大阪本社広報部の説明によると、朝日の記者は、但馬救命救急センターに到着したとき、亡くなった女児が救命救急処置中だった。病院内で静かに待機し、駆けつけた女児の両親にも声かけはしなかったが、センター側から退去を求められた。

それに応じて、記者は立ち退き、死亡が分かったときに、両親に話が聞けるかセンターを通じて確認した。しかし、両親が取材を拒否したため、記者は取材をあきらめた。このため、両親が女児を引き取って病院から帰る2時間半前には、すでにセンターにはいなかったという。

一方、読売と毎日は、現場に記者がいたことは否定しなかったものの、ブログの内容は事実とは違うと説明した。読売新聞大阪本社の広報宣伝部では、取材に対し、「記者は病院の許可を受け、病院幹部立ち会いのもと待機していました」とし、毎日新聞社の社長室広報担当は、「弊社記者は終始、病院側責任者の立ち会いの下、あるいは指示に従って取材をしていました」とコメントしている。

但馬救命救急センターの財務課では、センター長がブログを書いており、センターのホームページから入れるものの、基本的には個人のブログだと説明した。そのうえで、病院が把握している事実関係とは違う点があり、新聞社からの指摘を受けて、内容についてはセンター長が訂正や修正したことを明らかにした。

朝日、読売はさらに対応求める

ブログは、それを受け、3社の名前が削除されている。しかし、追記で、霊安室だけではなく,処置室前,敷地内でも当てはまるとし、「行き過ぎた報道が二度と起こらないことを切に願っております」と訴えた。反響が多いため、コメント欄は閉鎖したとしている。

朝日や読売の広報部では、この訂正や修正では納得しておらず、さらに病院に対応を求めていると明かした。朝日の広報部は、「記者がその場にいなかったと、ブログをきちんと訂正してほしいと思っています。センター側には、名誉を回復するように申し入れています」と言っている。

毎日の広報担当は、「ブログの弊社に関する部分は24日午後に書き換えられており、但馬救命救急センターも誤解の記述だったと認識したものであると理解しております」とコメントしている。

訂正要求に対し、センターの財務課では、「内部で調整中ですので、何とも申し上げられません」とだけ話している。