「言い訳」はマナー。インドのビジネススタイル

海外駐在員ライフ Vol.145

From India

スケジュールは「目安」!電車が数時間遅れても問題なし?


■スケジュールはあくまでも「目安」

はじめまして。微美安です。インドにある日系企業の現地法人で営業を担当しています。

職場は、数名の日本人駐在員を除けば、あとはすべてインド人のスタッフです。取引先には、インドに進出している日系企業もありますが、大半はインド企業です。日本人も、日々、インド人の顧客と直接やりとりします。

仕事で使うのはほとんどが英語ですが、たまにヒンディー語も使います。初対面のインド人にヒンディー語を使うと、非常に“つかみ”が良いですね。

インドでのビジネスでとても特徴的なのは、人間関係を重視するウェットな社会であること。打ち合わせも、電話やメールだけでなく、顔を合わせて話すことが大切です。特に、午前中の打ち合わせが13時くらいの昼食の時間に食い込むと、打ち合わせ相手から「ぜひ昼食を一緒に」というオファーがあることが多いですね。また、打ち合わせ時には、砂糖とミルクがたっぷり入ったチャイ(お茶)やお菓子がよく出てきます。来訪者に対する心のこもったもてなしは、まさにインドならではです。

インドの人々にとって、スケジュールはあくまでも目安です。期日通りに進むことはまずありません。普段の生活でも、電車なら数時間、飛行機なら30分以内の遅れであれば「No problem(問題なし)」。家のエアコンの工事であれば、「明日行く」といわれたら、それは「明日以降」になることが多いですが、ここで怒るのは損。インド5000年の雄大な時間感覚なんだな、と割り切る方が賢明です。

仕事の場面でも同様です。例えば、取引先の代金支払いが遅れているとき、当方から電話で催促すると、「請求書が届いていない」とのこと。再送すると「請求書は届いたが、紙にお茶をこぼして見えなくなったので、もう一度送ってほしい」。やれやれ、とまた送るが、しばらくしても支払いがない。再び催促すると、「上司が、休暇中なのでサインがもらえない。数日待ってほしい」。そして、数日後。「小切手を送ったが、届いてないかな?おかしいなあ」との返答。恐らく送ってはいないのでしょう。届いていませんよ、と連絡すると、「では一応、もう一度送るよ」。…こんな調子で、支払期日から数カ月遅れることも珍しくはありません。金利が年十数パーセントと高いせいか、いかに支払いを遅らせるかが経理担当者としての腕の見せどころになっています。

その一方で、彼らはとてもせっかちです。自分が受ける個別のサービスについては、スピーディーな対応を求めます。例えばインド行きの飛行機。「ビジネススタイル」というよりは、むしろプライベートな場面かとは思いますが、乗客の立場になったインドの人々は、客室乗務員の忙しさなどお構いなしに飲み物などのサービスを求めます。そのため、呼び出しランプが付きっぱなしで、客室乗務員は、大忙し。デリーの空港に到着した際、客室乗務員の女性が皆、疲労感を漂わせながら、ほっとした表情でインド人の乗客を見送っている光景をよく目にします。

また、インドの人々はかなり勤勉です。土曜日も勤務日となっている会社が多く、日曜日にも仕事の電話がかかってくることが珍しくありません。ところが日本は土日が休みのため、3時間半の時差を見込むと、本社に確認しなければならない案件があるときなど、金曜日の14時半までに日本と連絡が取れない場合、翌週の月曜日まで待たなければならなくなります。最近は月曜日も祝日となることが多く、ひどいときは火曜日まで待つことも。そのため、できるかぎりスピーディーに対応するように心がけています。すぐに返事をしないと催促の電話が100回以上かかってくることもあるほどですから。


■「牛の介抱をしていて遅刻しました」

そして、謝るよりも言い訳するのが当たり前。私が今までに聞いた社員の遅刻の言い訳も、「道路が大渋滞していた」「途中で事故があった」などは定番中の定番として、「途中で牛が倒れていたので介抱していた」「途中で羊の大群に道路をふさがれた」「財布を忘れて家に取りに戻っていた」などなど、実にバラエティに富んでいます。

こんなとき、「インド人は謝らない」などと怒ってはいけません。言い訳をするのは、インドの人にとってある意味「マナー」のようなものだからです。私も、インドで暮らすうちに、簡単には謝らずに言い訳するのは、お互いが自分の正当性を主張する中で、妥協点を見つけるための生活の知恵なのかもしれないと思うようになりました。最近は、インド人の中にも「日本人が相手のときは、謝ってしまった方が得策だ」と気づいて、すぐに謝る人も増えてきましたが、果たして本当に反省しているのかは、疑わしいところです。

次回は、インドの文化についてお話しします。