三浦しをん氏の『舟を編む』が、全国書店員が選ぶ売りたい本「2012年本屋大賞」を受賞したのは記憶に新しいところ。また、今回の特別企画として「翻訳小説部門」を開設。見事1位に選ばれたのが、ドイツのフェルディナント・フォン・シーラッハ氏著、酒寄進一氏訳の『犯罪』でした。

 ベルリンで刑事事件弁護士として活動するシーラッハ氏。彼は、同国屈指の弁護士ともいわれるほどの腕を持ちます。2009年に自身の事務所で扱った事件を引用し、書籍『犯罪』を刊行すると、33か国で翻訳されるまでのヒット作に。日独では発行部数80万部を突破。また、「ミステリが読みたい! 2012年」「2011ミステリーベスト10」などで、海外部門第2位にランクイン。いま、多方面で存在感を示している作品と言えます。

 例えば、老医師が妻を殺してしまった事件。17回も斧を振り下ろし、彼女をバラバラに切断して殺害。その残虐な事件の背景には、本気で誓いを立てて結婚した分、離婚という選択肢を排除してしまった男の苦しみがありました。殺人をしたにも関わらず、多くの人が老医師に同情したという事情もありました。

 その他にも、兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子や、羊の目を恐れて眼球をくり抜き続ける伯爵家の御曹司など、異様な事件をおこした犯罪者が登場。書籍『犯罪』のなかで、シーラッハ氏は彼らの裏側にある人間らしさを細やかに描いています。

 本屋大賞の発表当日、授賞式に参加できなかったシーラッハ氏は、あるひとつのショートストーリーを送ってくれました。

 「フランスの偉大な作家ギュスターヴ・フロベールがあるとき、同窓会に招待された。そのとき、ひとりが欠席した。病を煩ったのだ。同窓生たちはみんなで見舞状を送ることにした。もちろんフロベールが文章を書くことになった。彼は隣の部屋に移った。彼が歩きまわる足音が聞こえた。30分、1時間、1時間半。ついに疲労困憊したフロベールが部屋から出てきて、見舞状を披露した。そこにはたった一言、「お大事に」と書いてあった。」(東京創元社HPより)

 シーラッハ氏は、自らをフロベールに重ねるといいます。そんなユーモアある弁護士が綴った同作です、「小難しくて読みにくいのでは?」といった印象は、あっという間に払拭されます。



『敏腕弁護士が扱った事件が書籍に 本屋大賞・翻訳小説部門1位『犯罪』』
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 出版社:東京創元社
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